6.アメリカの大学院課程修了者の多い国の強み

 

企業や政府機関での主な職は大学卒業生で占められていることは何処の国でも同じであるが、その中でも優秀な大学卒業生の大半がアメリカの大学院で少なくとも修士課程を修了しているとなると、そうでない国と何が異なってくるか。

 

このような社会では年功序列制度が成り立たないことはすでに述べたが、国際的な視野が広くなり、また英語が堪能である。

 

最近、世界のあちこちで開かれる技術的な打ち合わせ会議や、見本市などでの説明会の様子がビデオで報道されることが多いが、こういう舞台で活躍する中国人や韓国人が見事な英語で堂々と発表しているのが目立つ。彼らの英語の発音は英国流ではなくアメリカ流である。残念ながら、日本人が同じようなことをすることは非常に少ないうえ、英語で話していても何を言っているのかわからないことが多いのは、発音が悪いためである。この違いは、アメリカの大学院課程修了者の多い国とほとんど居ない国との違いであることは明らかである。

 

日本の企業は韓国や中国より20~30年早く技術を開発し、絶対的な優秀性を保持している分野もある。しかし、家庭電気製品やコンピューター製品の輸出に関しては韓国や中国に追い抜かされてしまった分野が多い。家庭電気製品に関しては、アメリカの消費者がどのように家庭電気製品を用いているかの、また日本でのとの違いを調査しなかったにちがいない。一方、韓国ではアメリカの消費者がほしがるような製品(たとえば冷蔵庫、洗濯機など)を次々に送り込んでいる。コンピューターの部門では台湾がシリコンバレーと密接な関係を結び、部品と組み立ての終わった製品の両面の開発と生産で圧倒的な地位を保っている。また液晶モニターでは韓国が圧倒的に強い。日本では韓国製品を嫌う傾向があるので、韓国製品の優秀性とそれらの輸出の伸びの速さについてはあまり知られていないかも知れない。自動車の分野でも、韓国の現代自動車と紀亜自動車は性能、値段、スタイルの面で競争力が強く、日本の自動車を追い越すときは遠くないと考えられる。

 

日本の会社の海外駐在員は少なくない。アメリカの場合、日本企業の現地工場が多いから、大勢がいくつかの都市に滞在している。ところが、彼らの付き合いは同じ会社からの人たちに限られ、現地の社会とは交わらないし、アメリカの社会を身をもって体験することなく、英語もほとんどうまくならないまま、数年で帰国してゆく。同じ日本から来た人たちのあいだでも、会社が異なれば付き合わないのである。これでは、アメリカの大学院課程修了者が留学の体験とはほど遠いであろう。

 

日本の企業が他のアジアの国からの競争のないところで独走できる時代はそれでよかったのだが、アメリカの大学院課程修了者の数と定年雇用制の弊害が、現時点での日本と他のアジア諸国の競争の背景にあり、また将来を予測するときに考えなければならない重要な要素であることを指摘した。

 

中村省一郎 

11-19-2010

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