アメリカの旨い食べ物

 

日本から来てアメリカを旅行する人たちの間では、アメリカの食べ物の評判はよくない。よく槍玉に挙げられるのはビフテキで、草履のように大きくて食べられなかったとか、魚の料理といえばフライで、その横に乗っているのはポテトフライが山盛りで飽き飽き、とか。これは本当で、アメリカでは公共の交通機関がほとんどなく、旅行者は車もないことがおおいから、ホテルに閉じ込められると、そのホテルのレストランか、てくてく歩いても30分くらいで最寄のレストランがあれば幸いである。そういうレストランの多くはよい料理人はおらず、何年も陳腐な料理を出し続けているところが多い。そんな旅行が2日も続けば誰でもげんなりするのは当然といえる。

 

その一方、この10年くらいの間にアメリカの料理界の技術は世界一になったといってもよいほど向上しつずけている。アメリカには伝統の料理がないことで、アメリカ料理というのはイタリア、フランス、英国、ドイツ、ギリシャなどヨーロッパ各国の様式から出発した料理か、それらにメキシコ、黒人、タイ、中国、日本、インドなどの東洋の影響がある新しい様式である。要はその元を問わず、素材を生かし極限までに味を高めようとする意気込みが新しいアメリカ料理を作り出している。

 

少し話がそれるが、フジテレビに料理の鉄人という番組があった。1993年から1998年まで日本で定期的に番組が作成され、その後も2002年まで非定期的に作成された。アメリカでは日本で作られた料理の鉄人の番組に非常な人気があり、Food Channelという毎日18時間料理の番組だけを放送するチャンネルで、英語にふきかえて毎週放送された。その後、料理の鉄人は日本から舞台をアメリカに移した形で2005年以来アメリカ版が作られ、Iron Chef Americaという題で現在も放送が続いている。

 

日本でもそうであったように、アメリカで超一流のシェフといわれるためには、今ではこのIron Chef Americaに出て一度は勝たなければならないのである。この番組での料理の素材は競争の始まる40分前までは知らされず、なにが出てくるかはわからないから、この番組に出るためには可能な素材のすべてを知り尽くし、限られた時間内に創造性のゆたかで最高の味の料理を作る技能がなければならない。この番組はアメリカの料理人に非常に大きな刺激をあたえているに違いない。この番組に出てくるシェフたちはニューヨーク、ラスベガスその他の大都市あるいは観光地にレストランを開いているから、そういう店を見つけて食べに行くとよい。

 

Food Channelの番組では、専門家の競争ばかりでなく、家庭料理のための料理を教える番組も非常におおい。これらの番組をみていると、なるほどそうか、というようなヒントを教えていることがおおいし、またレセピのコピーはインターネットでいつでもコピーできるようにしてある。

 

この数年、他のチャンネルでも料理の番組が非常に多くなった。たとえば、PBS(public Broadcast Service)というチャンネルで土曜日の午後2時間以上にわたって料理教室やレストランの調理場の詳しい実演の番組を続けていた。

 

料理には素材の選択も大事だが、同じ素材を使っても、各素材の分量の違い、熱の使いかた、香辛料、盛り付けなどによって、まずくも、非常に美味しくもなるのである。そして同じ海老を料理しても、カリビア風、メキシコ風、イタリア風、フランス風などの特徴は、例えばカリビア風では味付けにラム酒を用い、メキシコ風では赤唐辛子、イタリア風ならローズマリ、フランス風ならワインとクリームで味をつけることでかもし出し、味はがらっと違ってくる。アメリカ人のシェフで醤油を隠し味に使えないシェフは失格になる。アメリカでは伝統がないだけに、どういうやり方でもよいから旨い物を作るということを優先できる利点がある。新進のアメリカ人シェフはそのような意識で腕を磨いているように思えてならない。彼らの生み出し、テレビで教える料理はそのとうりやってみると非常に旨い。

 

このような味覚に敏感で切磋琢磨をするシェフがいるレストランを探すのは旅行者には易しいことではないが、うまく見つかればアメリカでもすばらしく旨い料理が食べられる。