ミュンヘン郊外にYさんのお宅を訪ねて(2)

ボルさんの運転でバイエルンの自然と教会を満喫

 

武山高之

 

梢さんのホワイト・ソーセージの昼食を頂いた後、ボルさんの運転でフェルトキルヘンから東南のオーストリア国境のほうへ、3時間ほどのドライブに出かけました。

 

バイエルンの田園風景と山並

フェルトキルヘンの近くは、牧場・畑が続く緑の地帯です。農家の大きな作業小屋や家畜小屋の屋根は太陽光パネルが敷き詰められているのが、目に付きました。北ドイツでは風力発電が目立ちましたが、こちらは太陽光発電です。ボルさんに聞くと、バイエルン地方では風が弱いので、太陽光のほうがいいようでした。政府から補助金が出ていて、設置が促進されているそうです。さすが、環境先進国ドイツと思いましたが、ボルさんの意見では、まだまだ問題も多いそうです。

牧場・畑地帯を過ぎると、ドイツ・アルプスの山岳地帯に近づいてきました。特徴のある形をしたウェルデンシュタインの山が見える駐車場で一休みして、冬はスキー場になる山岳地帯に入りました。途中の険しい坂道を、若い男女の自転車旅行のグループが漕ぎ上がってゆきます。これも、いかにもドイツらしい風景です。

山荘風の《クマンバチの子》ホテルでドイツ風アップルケーキとお茶を楽しみ、しばらく雄大な景色を眺めながら、

〈下を流れるのがイン川です。その向うがオーストリアのチロル地方、さらに遠くに見えるのがカイザー山脈、ちょっと西のほうが、オーストリアのインスブルックです〉

と教えてもらいました。帰り道に高速道路のアウトバーンの上を横切りましたが、そこには、ザルツブルグの行き先表示も見られました。

ここはYさんご夫妻が住むミュンヘン郊外のフェルトキルヘンから50キロあまりのところです。チロル・インスブルック・ザルツブルグというオーストリアの地名は耳に心地よく聞こえ、旅情を誘います。ご夫妻はほんとにいい所に住んでおられると羨ましく思いました。私たちはケルンからライン河を遡ってきましたが、ミュンヘンではドナウ河の上流のイザール川、今はドナウ河のもう一つの上流のイン川に来ていました。

 

バイエルンの小さな教会

 ヨーロッパを旅すると、必ずどこかの教会を見ることになります。今回も、

〈バイエルンの小さな教会はどうですか〉

と事前に梢さんから提案がありました。

〈いままで観たことがないので、是非〉

とお願いしました。

 小さな町の教会を4ヵ所ほど見て回りました。

教会のシンボルである塔は、ゴシック建築のようにシャープに尖がったもの、鉛筆の先のようなもの、玉葱がたのものなどと多様でしたが、祭壇には、キリストの磔刑図や聖人の彫刻で優美・繊細に飾られたロココ調のものが多く見られました。

いずれも、南部ドイツに多いカトリック教会です。小さい教会のものですが、一級の美術品でもあるように思いました。

 ベルブリングの教会にある、《祈祷する三人の婦人》の絵も印象的でした。地元の画家によって描かれた宗教画の一種でしょうが、祈祷の対象になるキリストや聖人の像はありません。ただ、年老いた3人の農婦の祈祷する姿が画かれているだけです。私たちが訪れたときには、礼拝堂には人はおらず、跪いているこの絵の3人だけでした。

ヘグリングの教会の回廊には、信仰により齎された奇跡を描いた民俗信仰の素朴な絵がたくさん並べられていました。通りがかった神父さんが説明をしてくれましたが、この絵は説明不要です。字が読めない人にでも、神のご加護が理解できるように画かれています。外国人の私たちにも、すぐに理解できました。バイエルンの人たちの信仰心は、日本の四国八十八箇所を回るお遍路さんに通じるものがあります。

街の集落で目立つのは、教会の塔のほかに、3階建てくらいの高さで、楽しい装飾が施されたメイポールがあります。祭りの時には、民族衣装を着飾った人たちの踊りで賑っていることでしょう。木造の小さなホテルや民家の2階、3階のベランダは赤いゼラニウムが満開で、ボルさんの赤い車で訪れた私たちを歓迎しているようでした。

 

バイエルンで過ごしたいい一日でした

 私は出張や観光でドイツをなんかいか訪ねました。いずれも都会か観光地で過ごしました。今回のバイエルンの1日のような過ごし方は、初めてでした。

オーストリア国境に近いバイエルン南部といえば、ロマンチック街道の南端にあるルートヴィッヒ2世のノイシュヴァインシュタイン城が日本人には馴染み深い存在です。

でも、〈こちらの、小さな町の小さな教会もいいよ〉

と招いているようでした。

《化学史の旅》を1日延泊して、本当にいい経験をしました。Yさんご夫妻とお知り合いになれたお陰です。また、お二人はいい所に住んでおられて羨ましく思います。また、訪れたい所でした。