200.24

西 村 三千男 記

連載「余談・ドイツ化学史の旅」

 

第18回 ワグネルとリッテル

 

 化学史研究発表会・2010(7月3−4日、明治大学)の一般講演の中で、下記の

発表を格別の関心をもって聴いた。

 

演題:ゲッティンゲン大学所蔵のお雇いドイツ人教師ワグネルとリッターに関する資料

発表者:小澤健志氏(NAAリテイリング)

 

ドイツ化学史の旅・パート2で、ヴェーラーゆかりのゲッティンゲンを訪問するのに

先立って、ゲッティンゲンと日本を結ぶ人脈を調査した。一方では、日本人留学生に、

他方では、お雇いドイツ人に着目した。

その調査結果をアイソマーズ通信・2007年号に

アイソマーズ・ドイツ化学史の旅パート2の参考資料 

として掲載した。ワグネルとリッテルの日本に来てからの活動の記録である、

 

先般の小澤氏の発表は、上記の演題が示唆する通りワグネルとリッターの出自や来日

前の学歴、学位取得歴、職歴の詳細にわたっている。いわば、3年前の我が調査と補完

関係にある。講演を聴きながら偶然のマッチングに驚いた。小澤氏はリッターの出身地

や生年月日を確認するのに多大なる努力をされている。出身地であるハノーバー郊外の

レーゼという小村にも現地調査に訪れている。出身の大学、初等中等学校をはじめ、村

役場や教会のアーカイブにも丁寧に接触して、データの確認をされている。氏は歴史学

者ではない。成田空港で(株)NAAリテイリングにお勤めのバリバリの働き盛り、多

分30歳代の現役ビジネスマンである。このユニークな研究の原動力は何か?・・・と

興味が湧く。

 

小澤氏が講演で説明に使用されたPPスライドの抜粋を欲しいと感じたので、化学史

学会の事務局をされている東工大・梶雅範先生に小澤氏の紹介を頼んだ。早速、小澤氏

から快諾のメールが届いた。別途、氏の最近の研究報告の別刷りが郵送されてきた。科

学史学会の欧文会誌 Historia Scientiarum にドイツ語でまとめて投稿されたもので

ある。ドイツ語にご堪能なようである。7月4日の講演の中でも、ゲッティンゲン大学

所蔵のラテン語文献をドイツ博物館に勤務するドイツ人の友人にドイツ語訳してもらう

話題が出ていた。その報文の中で、研究の動機を述べられている。「日本の西洋科学の

黎明期に、啓蒙に多大なる貢献をしたお雇いドイツ人の経歴を明確化して後世に残して

おきたい」と。

 

(以下次回)