200.17

西 村 三千男 記

連載「余談・ドイツ化学史の旅」

 

第24回 あれがローレライ?

 

 ローレライはライン川の右岸にある。ライン川下りの観光遊覧船はマインツから出て、

コブレンツに至るコースが定番である。地上では、ライン川左岸を走るDBドイツ鉄道の

旧線から対岸のローレライを望める。このシリーズの第9回にも触れたが、ドイツ化学史

の旅・パート3の一行は、6月9日ケルン〜ミュンヘン間を移動する際に、ローレライを

観ようとして、約80分早く着くDB新線よりもこの旧線を選んだ。

 

このローレライの景観をルフトハンザドイツ航空がセールスポイントに利用したことが

あった。世界中がバブル景気に沸いていた1980年代のこと、ルフトハンザドイツ航空

はデュッセルドルフ〜フランクフルト間に、エアポートエクスプレスと名付けた専用列車

を定期運行していた。その列車には航空券で乗車し、社内ではルフトハンザドイツ航空の

スチュワーデスがサービスに当たっていた。車窓にローレライの見えるタイミングを見計

らって、彼女らが車内放送を通じてローレライを数カ国語で観光案内していた。

このことを、アイソマーズ通信・2005年号「ドイツ化学史の旅のこぼれ話」

第8回   ANA Deutschebahn Connection と AIRail と Airport Express

に書いた。

 

もっと古い話に遡るが、学習院大ドイツ語教授・早川東三著「じゃぱん紳士・夜のエチ

ケット教科課程」(光文社カッパブックス)を宍戸圭一先生から紹介された。記録はない

が、記憶では東京オリンピックの翌年1965年の某月某日、ドイツ駐在が決まった挨拶

を兼ねて京大工業化学教室に旧2講座、山本經二さん、内本喜一朗さん等を訪ねた。内本

さんの実験台の傍で円椅子に座って宍戸先生がそのカッパブックスをご覧になっていた。

「ドイツへ行くのなら、この本は参考になるよ!」と薦められ、書店で早速求めた。副題

は「夜のエチケット云々」と思わせぶりであるが、下ネタの話題ではなく、ごく真面目な

活きたドイツの情報が書かれていて随分役に立った。以下に述べるのは、ローレライにつ

いてその本に書かれていた(・・と記憶している)こと。現在、その本は手許に無い。事

実関係を確認しようと、都立、区立、大学付属の各図書館を調べたがどこにも蔵書されて

いなかった。故に、以下はうろ覚えである。

『列車がコブレンツを過ぎて暫くすると、ライン川の対岸にローレライによく似た景観が

次々と現れる。観光客はカメラを構えて、「あれがローレライ?」「似ているけれど、違

う」「今度こそ本物?」とワイワイガヤガヤ云いながらシャッターを押す。やがて本物の

ローレライになる頃にはカメラ内のフィルムを使い切っていた』

 

 デジカメではなくフィルムカメラ時代ならではの光景である。今回、仲間の皆さんが車

窓からローレライを撮影するのを眺めながら、カメラを持たない私はそんな昔話を回想し

ていた。

 

(以下次回)