7.ビューモントインで

 

ケンタッキイーでの宿泊はバーボン見学からあまり遠くないビューモントインに予約してあった。この宿は大きなホテルで、1世紀半前に建てられ、由緒あるホテルと考えられていて、値段もそう安くはなかった。ここに泊まらないとするとレキシントンかルイビルまで行かなければならないという制約もある。

 

部屋に入ってみると、古い調度品と取り付けの建具が1世紀半前という年月を感じさせた。重厚で立派な食堂があり、そこで食事をとることにした。骨付きのしゃれたラムラックの料理を想像しながら子羊の料理を選んだのだが、実際に出されてみたらラムラックではなく、あまりの大きさに二割ほど食べて投げ出してしまった。また付いてきた野菜には多種類の香辛料が使ってあり、これも一口だけしか食べられなかった。デザートのケーキとコーヒーでやっと夕食をたべた気になれた。

 

ホテルは広い敷地の中にあり、朝食の後の散歩が気持ちよい。黒胡桃の木がたくさん植わっていたが、どの木にも宿り木が何本も葉を茂らせていた。我が家にも黒胡桃は二本あって、木の様子はいつも見ているが、このような宿り木をみたのは初めてである。ホテルの職員に聞いてみたら、missile toe と呼ぶことを教えてくれた。

 

ホテルの売店にバーボンボールというチョコレート菓子を売っていた。ウイスキーボンボンかと店員に確かめたが、ボンボンというのが通じない。いろいろ質問しているうちに、どうやらそのことらしいと思えてきたので一箱買ってみた。本当のウイスキーボンボンではウイスキーの液体が砂糖とチョコレートの殻に入っていて、ウイスキーの液体を吸い取った後、砂糖の殻をジョリジョリと音を立てて食べるのが懐かしい。何十年食べていないだろう。そんな期待をもって、部屋に持ち帰り早速試食したのだが、中に入っていたのはバーボンをまぜたクリームであって、落胆。しかし、旅行が終わって自宅で味見をし直したら、これはこれなりにバーボンの味をよく生かした、上品な味であることがわかった。

 

(注)

日本でウイスキーボンボンというのはフランスでボンボン オー デ ショコラと呼んでいる菓子の日本的表現である。ボンボンの意味はランス語のボン(良い)を繰り返したもの。今でもモロゾフ製菓が売り出しているとか。昔食べたウイスキーボンボンの記憶では、トリス程度の安っぽいウイスキーの水割りしか入っていなかった。高級バーボン入りは自分で作るしかないようだ。

 

11-5-2010

中村省一郎

 

 

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