付録2:アメリカの密造酒

 

バーボンについて語るとき気になるのがムーンシャインとよばれる密造酒の存在である。ある資料によれば、アメリカのウイスキーの一種類として、ムーンシャイン種はバーボン、ライウイスキイ、テネシイウイスキイ、ムーンシャインといった具合にれっきとして掲げられていた。その資料には各種のウイスキイの材料、熟成期間などがまとめられていたが、それによるとほとんどのムーンシャインの原料はトーモロコシが85%と15%がモルト(大麦の麦芽)、熟成期間はまちまちで、短いものは蒸留後すぐにビン詰めして配達するものでは車で運ぶ時間だけというような短いものもあるとか。

 

ムーンシャインにはビンに特徴があって、メーソンジャーと呼ばれる広口でねじのついた金属製の蓋のついたものを使っている。メーソンジャーは、普通の家庭でビン詰めの保存食品を作るために市販されていて、容易に手に入る。

 

ムーンシャインの噂はよく聞くが、実際に見つけて買うことは至難のわざと言える。おそらく南部の州の田舎の居酒屋に入り浸って、バーテンダーとよく知り合いになるまでは不可能であろう。

 

とはいえ、ムーンシャインに興味を持つ人も多いのであろう。そこに目をつけたアメリカのあるウイスキイ会社は、ウイスキイをメーソンジャーに入れ、ムーンシャインに見せかけて、まともな酒店で売っている。

 

ムーンシャインは時折大規模の取締りで検挙されている。それにもかかわらず後を絶たないのは、ムーンシャインのウイスキイが格段に安いことである。第一、樽詰めの熟成をしないので樽の費用と樽詰めと保存の人件費がゼロである。さらに樽詰めの熟成では天使の分け前といわれる、樽からの漏れによる損失がない。第二に税金がかからない。おそらく、もっとも安いバーボンの半値(つまり$7位)で売っているはずだ。

 

ムーンシャインは怖いという噂も多い。ムーンシャイン蒸留にとってポンコツ自動車のラジエーターは凝縮器として願ってもない道具である。ところが、使いかけのときはラジエーターに不凍液が残っていてウイスキイに混ざってくるのだという。また、ムーンシャイン業者によっては、ウイスキイにガソリンを少し混ぜるのもいるようで、理由はウイスキイのパンチを食らわすような味を強めるためだそうだ。

 

ムーンシャインはアメリカの大衆文化の中に多きな影響をもたらしている。一例は、ナスカーと呼ばれる自動車レースとの関係で、ナスカーで優勝した運転手の多くがムーンシャインの配達の経験者である。ムーンシャインの配達員になるためには、ポリスの追いかけられたとき逃げ切るだけの運転技術と、さらに自動車のエンジンを改修して馬力を上げ、逃げるときに十二分の馬力を出せるように改良できる技術を身につけなければならない。このような背景が、ナスカーのレースで大きな役を果たすというわけである。

 

ムーンシャインの多くは人口密度の低いアパラチア山脈に潜んでいるといわれるが、南部の州にちらばっているようだ。 

 

ムーンシャインの現場(リンク可)。背景の木は鋸椰子のよう。

 

 

Moon Shine

(写真はクリック可)

 

 

 

11-7-2010

中村省一郎

 

 

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