(4)ケンタッキーの道路標識

 

ケンタッキーはフォスターの民謡やケンタッキーフライドチキンで知らぬ人はないだろうが、オハイオに比べるとかなり田舎である。アメリカのある漫才師の言ったことであるが、オハイオではケンタッキーに住む人のことをヒルビリーといって笑うが、シカゴではオハイオから来たというとアハハハと笑うという。それなら、どっこいどっこいというとこか。

 

ケンタッキー州の道路標識はオハイオ州のと少し異なっている。州を通り抜けて走っている高速道路は連邦政府が作るので規格はどこの州でも変わらないのだが、そこから出て、地方行政の管理している自動車道路はテネシー流の道路標識なので戸惑うことが何度かあった。このような地方の道路から高速道路に入るときに、オハイオでは行く先の地名とどちらの車線から入ればよいかなどの表示がかなり前方にあり、いよいよ入るところで、こちらに入れ、という表示がある。それで道を右に曲がるときも左に曲がるときも安心してゆける。しかし、ケンタッキーでは後者の表示がないのである。

 

特に困るのは左曲がりのときで、対向車の車線を通って高速道路の入口に入るのだが、すぐ手前の横に背の高い草などが生えていることがあり舗装道路が見えないと、その入り口が本当に道路なのかどうか確信が持てない。一瞬の躊躇をするとそこを通りすぎてしまい、引き返してこないとならなくなる。またその入り口は路地のようなところもあり、こんなところで高速道路に入るわけはないなどの潜入感が働いて入りそこなったこともあった。何度かだまされている間に、これはケンタッキー風の道路標識なんだからとあきらめ、確信がなくてもエイと突入するのが平気になってきた。

 

11-3-2010  

中村省一郎

 

 

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