出来の悪い子孫よりはクローンか

 

出来の悪い子供で苦労するということはよくあることでわが身につまされることであるが、親は優れているのに子孫の質が悪いことが起こるのは植物では当たりまえとされている。

 

まず身近な経験から書くと、近年のトマトの市販の種は生産業界にあわせて味がわるくても皮が厚く輸送で崩れない品質に改悪(改良?)されていて、昔の旨さがなくなった。このため我が家では、夏の間に農家が道端で売っているようなトマトを買って味見をし、旨いのが見つかればその種を取っておいて、次の年はその種から始めるのである。ところが、好ましい品質のが2~3年続くこともあるが、ひどいときは次の年には全く異なる品種のトマトが出来たりする。

 

我が家には、けしの花が自生していて、毎年のように勝手に芽をだして花をさかせる。もともとは、ロンドンでBed&Breakfast式の個人の館のようなホテルに泊まったとき,

そこの庭から種をもらってきたのが始まりである。ところが、ある年少し種類の異なるけしの種を少し離れたところに蒔いた。その年は、異常がなかったけれども、次の年には交配種がいっぱい出来てしまった。それ以来、もとのロンドンから来たけしではなくなってしまった。

 

アメリカでは、日本原産のもみじが珍重されている。しかし、これにはものすごく種類が多く、よい品種の種から芽をださせてもほとんどは親と性質が非常に異なってだめだという。もみじの挿し芽は困難だから接木が主なる増殖手段となる。

 

最近椎茸の栽培に関する資料をよく読むが、ここでも同じ問題があるようだ。椎茸の種とは胞子である。椎茸を増やすためには、培養材に胞子を撒けばよいわけであるが、その胞子からできる椎茸は親とは品質の非常に異なるものが出来る可能性が高く信頼性がないという。これをなくするためには、親の菌糸をとりそれを培養するという。これは接木と同じ原理で、DNAの全く同じものができるわけだ。

 

家畜のクローンを作る動機はおなじである。例えば、健康で、牛乳の生産量がおおい牛なら、子供を産ませるよりはクローンをつくるほうが確実である。羊、豚、馬などでもクローンが成功している。足の速い競走馬の持ち主にはクローンの技術に感心が高いが、競馬業界としてはクローン馬の導入に反対が強いらしい。

 

中村省一郎(9-5-2010)