2010.1.15

西 村 三千男

 

「奇跡のりんご」を巡る話題〜その2

 

 

「りんごが教えてくれたこと」木村秋則著、日本経済新聞出版社発行

 

この本を今年のお正月に読んだ。キッカケは前項の講演会を予告する紹介記事

が暮れの日経新聞の東京経済ページに小さく掲載されたことであった。その記事

を見て、前述の中村さんの書評を連想し、ネット検索した。講演会の講師とこの

新書の著者とは木村秋則氏で一致した。講演の前に著書を読むのが良策であろう

と、早速、書店で新書を手に取ってみた。表紙、販促の帯、はしがき(序文)を

立ち読みして、魅せられて、購読を決めた。

 

 中村さんが4時間で読まれたこの約200ページの新書を、私は読書スピード

が遅くてその何倍もかかったが読み終えた。木村さんは自然を観察して考察する

力が卓越しているが、文筆力も並大抵ではない。これまでの常識を覆すような論

理を平易な用語で淡々と述べている。巻末に日経新聞の工藤編集委員へ宛てた私

信が公開されている。この手紙の素敵な出来映えを見れば、この新書を木村さん

本人ではなくゴーストライターが書いたのでは?との疑惑は、一掃される。

 

内容紹介は昨年の中村さんの書評で尽くされている。ここでは繰り返さない。

 

 上述の手紙に山崎光雄氏(元西武百貨店社長〜会長)の名前が出ている。工藤

編集委員は山崎氏を「木村さんの夢の後見人」と注記している。氏は東京都出身

であるが、若い日々に家庭の事情から苦学していて、糸魚川市近傍の能生水産高

校(現在は新潟県立海洋高校)に学んだ。木村さんが弘前実業高校出身であるこ

とと類似していて、肝胆相照らす部分もあるのかも知れない。

 

話が逸れるが、私はこの山崎氏と面識は無いけれど少しだけ知っている。山崎

氏が西武百貨店のトップに登りつめた時、地元は地域発展にその力を借りたいと

いう思惑で一時的に舞い上がった。黄金の1980年代の末期、バブル経済が爛

熟していて、糸魚川周辺でもゴルフ場やリゾート開発が全盛期であった。丁度そ

の時期に能生水産高校の創立90周年記念行事が催行された。同校出身の大物経

済人として山崎氏を記念講演会の講師に招いて、地域発展に繋がるスケールの大

きい講演をお願いした。私は地元企業の工場長として講演を来賓席で聴講した。

 

 この新書には「奇跡のリンゴ」と題する先行書(2008年7月、幻冬舎)が

あり、ベストセラーになったそうだ。その筆者は木村さんではない。NHKの番

組「プロフェッショナル、仕事の流儀」に採り上げられ(2006.12.7放

送)、その取材班のスタッフが著述したもの。その放送のご縁で木村さんは司会

の茂木健一郎氏と意気投合した。「茂木さんが脳科学者なら、木村は農家学者」

とダジャレもうまい。その先行書を私は読んでいない。

 

(その2 おわり)