2010.2.1

西 村 三千男

 

「奇跡のりんご」を巡る話題〜その5

 

「屋久杉」と「糸魚川眞柏」と

 

前回述べたように、たっぷり施肥して窒素分が過剰になれば、植物の根は貧弱に

なる。逆に、肥料が欠乏して飢餓状態になると、根は逞しくなる。木村さんの自然

栽培法の根幹になる思想である。

 

それを説明する有力な実例は「屋久杉」に見られる。3千年以上にも及ぶ長寿の

秘密は、第一に、根元の地盤が水捌けのよい花崗岩であるために、肥効成分が乏し

く、根が極端に逞しくなっていること。第二に、同じ理由から、成長が遅く、木質

は木目が詰まっていて密度が高いこと。第三に、高温多湿の環境中でも病虫害から

自ら身を守るために、樹脂成分が多く含まれていることと云われている。

 

通の間では知る人ぞ知る「糸魚川眞柏(いといがわしんぱく)」という盆栽の銘木

がある。筆者の三回の居住を通算すると、四半世紀以上もの長い間、糸魚川近傍に

住んだことになる。その間、「糸魚川眞柏」について時々見たり、聞いたりする機会

はあった。しかし盆栽に格別の関心はなく、知識は耳学問の域を出ない。「糸魚川眞

柏」は断崖絶壁の中腹の様な場所に自生している。岩場の隙間に根を張って、肥効

成分どころか、水さえも充分には恵まれない厳しい条件下で、長い年月の間、風雪

に耐える。その結果として獲得した逞しい根と頑丈な幹や枝振りが珍重されるので

ある。山に自生する「糸魚川眞柏」を採取するのは非常に危険な作業である。高価

な自生の「糸魚川眞柏」を採取していて、誤って転落死した幾つもの事例を知って

いる。

 

 類似の話は天然に自生する「高麗人参」や「山わさび」でも聞くことがある。

 

(その5 おわり)