クッタはプランクの講義をミュンヘン大学で聞いていた

 

クッタの名前は化学者たちにはあまりなじみがないかも知れないが、定微分方程式の数値解法でよく知られるルンゲクッタ法といえば、知っている人もあるかもしれない。なにせ、我々の習った数学では、2年生のとき微分方程式の講義で、数値解法といえば1分くらいで通りすぎてしまった。教科書の記述も興味がもてるようには書いてなかった。

 

クッタという名前は空気力学ではクッタの条件としても非常によく知られている。クッタの条件とは、飛行機やタービンの羽の一番後ろで刃のようにとがった部分(trailing edge、TE)で流体は迂回しない、ということである。つまり羽の上面と下面をそって流れてきた流体はTEで合流し、ともに羽からはなれるという原理をあらわしている。なぜ条件というかといえば、この原理を満たすように式を解かないと、羽の周りの流体の流れを理論的に推定することができないからである。

 

もう少し詳しく書くならばこうである。粘性を考慮しているナビアストークス方程式でこのことは自動的に満たされるが、時間と費用がかかる。1985年以前にはナビアストークス方程式を解くこと自体事実上不可能であった。だから粘性を無視した、ポテンシアル方程式か、オイラー式で解くことが多い。実際、現在使われているジエット旅客機の羽の設計はほとんどがポテンシアル方程式か、オイラー式による計算で行われている。しかしクッタ条件を境界条件として数学的に満たすようにしておかないと物理的に無意味な解しか得られない。したがってクッタ条件とは機械工学や航空工学では絶対に忘れてはならない名前なのである。

 

そのクッタがミュンヘン大学で、これも量子力学で知られたプランクの講義を聞いていたということが、ミュンヘンを訪れるアイソマーズグループとして興味のあることなので、ここで紹介した。

 

中村省一郎  May 2010