(最後の写真はデッキからガラス窓を通して写したのでガラスの反射が入った)

 

 

 

スターンバーグ湖での水上音楽会

 

第三回ドイツ化学史の旅に参加したグループがミュンヘンで2泊した日の夕方、3家族がスターンバーグ湖での水上音楽会に出かけた。スターンバーグ湖はミュンヘンの南方にある大きな湖でミュンヘン中央駅からから電車で約30分かかる。船着場で待っていると定刻の少し前にかなり大きな三階建ての双胴船がやってきて、乗客は二人のトランペット奏者の吹奏に迎えられて船に乗り込んだ。

 

船の中は外からは二階に見えるところが大きなホールになっていて、窓際に中二階(mezzanine、外からは三階に見えるところ)があり、窓際と中二階に客用のテーブルが並べてあった。一個のテーブルは10人の席があり、我々3組の夫婦はその真ん中に向かい合って席をとった。音楽を演奏する場所はホールの一端にしつらえてある。この船の内装や、調度品は新しくて気が利いていた。「王様のように食事をして音楽に興じる」というのがこのコンサートのうたい文句である。

 

船が動き始めて間もなく、客の好みの飲み物(おもにワイン)が配られ、オードブルとサラダが出された。湖はまことに静かで、船はすべるように動いてゆく。オードブルとサラダは見た目も味も悪くなかった。それらを食べ終え、ワインでほろ酔いかげんになったころメインデッシュが出された。ポテトのグラタンと牛と豚の食べきれないような大きな肉がその内容である。ポテトグラタンというのは薄いポテトを重ねた中にグラタンソースとチーズがはいっており、工夫をこらした洒落た料理といえた。しかし肉のほうは牛も豚も大きいばかりで、堅く、一口食べただけで、それ以上食べる気になれなかった。しかし、隣に座っていたドイツ人の年配の夫婦はどちらもこれらの肉を黙々と全部平らげてしまったのに仰天。このようなところで常識はずれの料理を出すはずはないので、この料理はドイツでの当たり前の(高級)料理ということになるのかも知れない。ドイツでいつも思うのだが、日本やアメリカとは肉の扱いが異なるようで、こちらがそれについてゆけないのだろう。

 

食事が終わったところで、演奏会が始まった。曲はビバルデイ、曲名は全部はわからなかった。最初の2曲はヴァイオリン、チェロとチェンバロの三人。ヴァイオリン、チェロの奏者はそのしっかりした音から判断して、どこかのオーケストラの楽員であろう。チェンバロ奏者はかなりの腕の持ち主であることはまちがいない。なぜなら、ヴィバルデイやバッハの曲ではチェンバロの楽譜は書いていないので、チェンバロ奏者は他のパートの楽譜を見ながら自分で和音とメロデイをつけて弾く難儀な役を果たさなければならないからである。3曲目でフルート奏者が加わった。このフルート奏者は技術的にもたしかな腕があるばかりでなく、他の奏者を率いて音楽を盛り上げてゆく力のある人であった。しかしフルート奏者が加わらない曲では、演奏は平坦で、あまり高い点はつけられなかった。

 

ここで音楽は休憩にはいり、観客のほうは、アイスクリームとコーヒーのデザートの時間となった。ワインもほしければいくらでも注いでくれる。

 

ドイツは日本やアメリカよりも緯度が高いので、日沈が遅い。それでも、ようやく日は沈み、船は湖の南端から引き返している。楽員たちが再び入ってきた。すこしワインが入ったのか、ヴァイオリン奏者はだいぶ顔が赤い。

 

4曲目はビバルデイの四季の春と夏であった。この曲は弦楽オーケストラ(チェンバロは入れても入れなくてもよい)のために書かれた曲で、弦楽4部が必要であるのに、ここではヴァイオリン、チェロとチェンバロの3人で、つまり、第2ヴァイオリンとビオラは歯抜けのまま演奏したのである。おまけに、ワインのせいか、ヴァイオリン奏者がかなり音をはずしていた。だから素人の楽団の集まったメンバーだけでやる練習のような演奏になって仕舞った。

 

最後の曲はバッハの組曲2番であった。この曲は弦楽オーケストラとフルートのために書かれた曲で、フルートが常に聞こえるので、第2ヴァイオリンとビオラが欠けていることはほとんど気にならなかった。それにこのフルート奏者は非常に上手であった。一楽章を飛ばし、二楽章から全曲を演奏した。一楽章は非常に長い上、フルート奏者が息をつぐ暇もないような曲で、しばしば二人のフルート奏者が協力して演奏することがある。つまり息をつぐとこまで一人が吹くと、その次はもう一人が息をつぐとこまで吹くという具合である。

 

文句がましいことを沢山書いたけれども、全体としては、美しい船室、景色、オードブルとデザート、音楽、最後に桟橋での仕掛け花火、それにアイソマーズの友人とこのような所に来れたこと、満足感と共にミュンヘンに帰る電車に乗った。

 

中村省一郎 6-24-2010