挿し木の試み

 

私が植物に深い興味を持っていることは周知と思うが、最近挿し木の試みをしている。挿し木というのは、木の枝を切って土に埋めておくと根が生えてくることで、長年知ってはいたが、ラズベリー以外で成功したことは皆無に等しかった。

 

ところが、半年位前にrooting hormon(RH)の存在を知って非常に興味を抱き、手に入る資料はたいてい読んだ。Indole-N-butylic acidがRHとして市販されていて、これを切った枝の下端5mmくらいのところに塗りつけてから土に埋めると、根が生えやすいという情報である。ブランド名の異なるもの(添加物や濃度が異なる)をいくつも買い集め、春が来て新芽が出てくると、庭にあるほとんどの種類の植物の枝を切ってRHを塗り土に埋めたが、成功率は低かった。挿し木を成功させるための決め手は、自動灌漑装置がであることも気がついていた。この装置とは、ノズルから5分おきに10秒ずつ水道水の霧を散布する装置である。

 

そこで5月半ばから2週間かけてこの装置を製作した。配管はPVCで、一端にはソレノイドで電気的に開閉する栓、他の端には高さ1mくらいの噴霧ノズルが付いている。二個の電子タイマーでソレノイドの開閉をおこなう。一個は1時間単位で作動を行う10ドルくらいの市販のタイマーで、目的は夜間電源を切り、霧の噴出を昼間のみに制限することである。もう一個のタイマーはICを用いたアナログタイマーのスイッチで、5分おきに10秒ずつソレノイドを開く。これは、部品を買い集め自作した。

 

装置は庭の南端で家屋から一番遠いところに置きたかったが、そのためには水道管の地下敷設が必要で、すぐには 出来ないので、まずは玄関脇の水道蛇口の近くに置いた。ノズルの下で直径3mくらいの範囲が、霧を浴びる。

 

早速挿し木を並べた容器をこの下に置いた。そこで8日間のヨーロッパ旅行の出発日になってしまったので、霧の散布が自動的に働いていることを確認して出かけた。旅行から帰って挿し木を見たところ、見事な成功が確認された。霧の散布があると、挿し木を直射日光に当てることが出来、葉のなかの光合成が根の生成と発達を促すことに疑いはない。このことがコツであることが分かったのである。

 

それから約4週間が過ぎたが、いくつものパラメターがあるようで、それらの影響をしらべている。根のつきやすい植物と、そうでないのとがあることもはっきり分かった。前者には、レンギョー、ベゴニア、アジサイ、ハイビスカスがあり、ヒイラギやバラも挿し木ができる。トマト、ジャガイモは3日間で完璧な根ができてしまうのには驚いた。後者は、桜、林檎、樫、もみじ、などの幹の堅い樹木。

 

この技術は、小さな枝を手に入れさえすれば、珍しい植物などのコピーを作れるところに利点がある。かなりのことが判明してきたが、まだまだいくつもあるパラメターの影響を調べてゆかないと、熟知したとはいえない。しかし、学生に繰り返し教えてきた最適実験法が、酒作りや植物の趣味にそのまま役立ち、最初は未知の世界でも、ほぼ最小の実験数で全容が明らかになってくることが愉快である。当分退屈することがなさそうだ。

 

挿し木をして10日目の根が出たレンギョウ

 

トマトは挿し木をして3日で根が出来た。

 

中村省一郎 (7-10-2010)