(2)               Glenn Gould, Genius Within, Life Documentary (Movie), (12/27)

 

グレングールド

 

この番組はピアニストグレングールドの生涯を、古いフィルムや知人親類などの回想談をつなぎ合わせて作ったドキュメンタリー映画である。非常に興味深い映画で、何度も見直した。全部英語だから分かりにくいかもしれないが、分かりにくいのは英語のせいだけではなく、誰が話しているのか、何のことを言っているのかを何度か見ているうちに分かってくるようになると、面白みが増す。

 

グールドは1932年カナダで生まれれ、1982年50才で世を去った。祖父の従兄弟がエドワードグリーグであったと自分で語っている。20世紀の最も天才的なピアニストとも言われながら、大勢の観客の前で演奏することと、演奏旅行が大嫌いだった。それでも、フルシチョフ時代のモスクワとレーニングラードで演奏をおこない、ロシア人に深い感銘をあたえた。そのときの録音と、ピアニストアシケナージの感想談が含まれている。

 

演奏会が嫌いだったとはいえ、バーンシュタインの指揮するオーケストラと何回かブラームスやベートーベンのピアノコンチェルトを演奏している。バーンシュタインが演奏の直前にした短い演説がおもしろい。「私はミスターグールドのピアノの弾き方に賛成しているわけではありません。ピアノコンチェルトの演奏では指揮者がボスなのかピアニストがボスなのかの疑問がおこります。しかし彼は非常に真剣なピアニストであります。したがってかれの弾き方にあわせて、オーケストラの指揮をすることにしました。過去にもこのような経験は一度ありました。そのときのピアニストはミスターグールドでした」(観客の大笑い)。このコンチェルトの一部が含まれている。

 

音楽の好きな人にとっては、このフィルムには、グールドの引いたピアノ曲が部分的ながら数多く入っていて、またその分析もなされている。その演奏が美しく、聞きなれた曲でも、グールドが弾くとまったく異なった新鮮な曲に聞こえてくることが不思議だ。

 

グールドの女性関係についても詳しく描かれている。美しい女性が何人か出てくるし、有名な作曲家である友人とその妻とグールドの三角関係も詳しくえがかれている。普通の映画ではうそも本当も俳優が演じるが、ここではすべてが本人たちで、事実のみが伝えられている。彼の人生そのものが詩みたいだ。

 

ベートーベンのコンチェルトはすべて学生時代に飽きるくらい聞いたためか、その後何十年も聞く気にはならなかったが、このフィルムを見たおかげで、ピアノソナタも含めかれの録音したCDを7枚一度に購入して聞きなおした。ベートーベンの音楽が私にとって新しい音楽に聞こえることに、驚いている。