201124修正

西 村 三千男 記

 

「旅の雑記帳・オランダ」 

 

第18話 ダッチの人々〜その2(ケチ?)

 

「ケチ?」

ヨーロッパ社会では「オランダ人はケチ・・・」と云うのが定説であるらしい。

オランダ人のケチを風刺する小話が近隣諸国の英国人、ベルギー人、ドイツ人の間

で語られる。傑作小話もあるが、それらはネット検索にお任せしてここでは取り上

げない。皮膚感覚から得た私の結論は

「オランダ人はケチではない。一種独特の合理的な金銭哲学を持っている」

ということである。

 

「夜警」

アムステルダム国立美術館にレンブラントの名画「夜警」が展示されている。こ

の名画「夜警」は実は集団肖像画であると云う。17世紀当時、ヨーロッパの富裕

層は自らの肖像画の制作を競っていた。一流画家レンブラントに肖像画制作を頼め

ば、制作費も嵩むし時間もかかる。そこで、集団肖像画の出番となる。そう言えば

「夜警」の画面では、端の人物も正面を向いて丁寧に描かれている。制作費の分担

は、肖像を描く大きさと描く位置によって異なる筈で(前回述べた)スプリットビ

(Split bill)が合理的であるのに、何故か均等割の「割り勘」で決済しために、

後日もめ事の種になったとも伝えられる。

 

「チープカントリー」

このシリーズの第11話「スキポール空港」の中でも少し触れたが「オランダ全

体が何でもかんでもチープカントリー」という認識である。共通通貨ユーロを導入

した2002年以前のオランダ通貨はダッチ・ギルダーであった(不思議なことに、

口頭ではギルダーなのに表記はフローリンHfl)。スイスフランと並んで安定通貨と

みられていた。旅行者にとってはホテル、レストラン、タクシーなどの各種サービ

ス料金がチープで、滞在費が安上がりであった。酒、タバコ、雑貨なども隣接する

国々と較べて安いので、ベルギーやドイツから買い物だけを目的に出入国する人々

もいた。これはイタリア〜スイス国境でも同じ理由から同じ社会現象があった。斯

く云う私も、駐在員の頃に流行したサムソナイトのアタッシュケースはオランダ出

張の機会に購入したのを思い出す。

 

「1インチ12文字」

ワープロの誕生前は欧米との商用コレスポンデンスは専ら英文タイプライターに

依った。ワープロの文字サイズは10ポイントとか12ポイントとかポイント数で

大小自由に選べるが、往時の英文タイプでは1インチ幅に10文字と12文字の2

種類が標準であった。デュッセルドルフ駐在事務所に勤務していた頃、オランダの

取引先の某社(AKZO関係ではない)から受け取る書状は、常に1インチ12文

字(エリートと称した)の文章が、レターペーパーの両面にギッシリと印字されて

いた。紙の節約である。オランダ人のエンピツ1本、紙1枚をも節約する精神に感

心した。

 

「シンガポール航空」

JV会社のMCA製造プラントがスタートした1978年頃、AKZO社のスタ

ッフたちはオランダ〜日本の間を往来するのにシンガポール航空を多用した。その

当時のシンガポール航空は、知名度もまだ低く、今日の超一流キャリアーになる以

前の草創期にあった。新たな旅客に売り込むキャンペーンとして、サービスのシン

ガポール一泊と安価な航空運賃とを組み合わせて提供していた。AKZO社の友人

に航空会社を選ぶ決定権者は誰かと尋ねた。「決めるのは会社、節約のメリットも

会社のもの、但しシンガポールの一泊は自分たちがエンジョイする」と答えた。

 

「手巻きタバコ」

第2次世界大戦が終戦となった混乱期の手巻きタバコをご記憶だろうか?オラン

ダでは、つい最近まで手巻きタバコが実用されていた。革袋に入れた自分専用ブレ

ンドのタバコを専用の巻き紙に取り分け、紙の端を舌でペロリと舐めて器用に巻き

付け、トントンと叩いて行儀を整える。後はライターで火を着け普通に喫煙する。

これを会議室でも、公衆の面前でも堂々とやっているのを、数年前まで見かけたが、

最近の禁煙ブームで見なくなった。手巻きタバコは周囲からはケチに見えるが、彼

等はケチでやっているのではない・・・と云っていた。世界でただ一つの自分専用

ブレンドへの拘りだという。

 

                              (つづく)