201118

西 村 三千男 記

 

「旅の雑記帳・オランダ」 

 

第23話 ダッチの人々〜その7(対ドイツ感情)

 

遺伝子組み換え(GM)作物を食品原料にすることに慎重〜否定的な国の双璧は

日本とドイツである。逆に積極〜肯定的な国は、アメリカ、カナダ、ブラジル、ア

ルゼンチン、中国である。爆発的に増加する人口に対して食料を供給するにはリス

クを負ってもGM技術は必要だとする立場である。

 

それでは、このシリーズの主題であるオランダ国の立ち位置はどうか?第19話

の末尾に「何でもOKの国オランダは遺伝子組み換え(GM)作物もOK」と断じ

たがやや早計であったかも知れない。先般、会社の後輩F氏とオランダを語る機会

があった。彼は「オランダはGM作物にかなり慎重ですよ」と云う。調べてみると

オランダ国内もGM作物を巡り賛否両論が鋭く対立していると云われる。一方で、

我が家の45年来のドイツ旧友フラウKとそのファミリーは「オランダの農産物は

バイオテクノロジーに汚染されていて、食べ続けるのは危険である」・・・とオラ

ンダ産の野菜等を買わない。聡明な長女Mさんの意見に従っている。

 

オランダとドイツは長い国境線を共有する隣国同志である。ヒト、モノ、情報の

交流は盛んである。両国の相手国への相互の国民感情はどうか。「何でもOKのオ

ランダ人」対「何にでも厳格なドイツ人」である。互いに「この石頭!!」「この

粗雑野郎!!」と内心では蔑みあっているみたい。オランダ人はフランス人、ドイ

ツ人のように尊大ではない。滅多なことでは、隣国のことを明示的に侮蔑するよう

な発言を外国人である私に聞かせるようなことはしないが、親しくなるとポロリと

漏らすことがある。

 

個人の生活でも、宅地の境を接している隣人同士は長い年月の間にはイザコザが

起こりがちであるが、それは国家レベルでも同様である。ドイツとフランス、英国

とアイルランド、中国とロシア、中国とヴェトナムなど例を挙げるときりがない。

19世紀後半からドイツの経済発展は目覚ましく、それに伴って国力、軍事力も強

化されて中央ヨーロッパのスーバーパワー(経済大国、軍事大国)となってゆく。

第2次世界大戦でオランダはヒットラーに対英国戦争の前線基地として国土を占領

され、蹂躙された。その憎しみは、表面には出さないとしても永い年月消えること

はない。

 

今日的に、ドイツはオランダにとって輸出入ともに最大の貿易相手国でもある。

経済力、産業力、軍事力だけでなく、学問、科学技術、芸術、文化などの国力全般

でも、オランダはドイツに対して比較劣位を認めざるをえない。オランダ対ドイツ

に関して多くのオランダ人が抱く屈折した感情は、韓国対日本の関係において韓国

人が抱くそれと少し似ているように思われる。

 

                              (つづく)