201124

西 村 三千男 記

 

「旅の雑記帳・オランダ」 

 

第26話 オランダ人の対日感情〜その3

 

1978年のある日の夕食の席で、W社長が西村に読むように推薦されたのは

英語の小説「Shōgun(ジェームズ・クラベルの小説)。これは後に邦訳され、

映画化され、TV放映もされたが皆様はご記憶だろうか。

 

 実は、私は多忙に取り紛れて、W社長からお薦めのあったこの英書を直ちには

読まなかった。2年くらい後に、邦訳が出版されてから楽々と読んだ。出版社は

TBSブリタニカ社、上中下3冊(各約500ページ)の大作であった。そして

アメリカで映画化もされた。その映画に三船敏郎が出演していた事実が約30年

の歳月の経過を物語っている。その映画を映画館では鑑賞しなかったが、直ぐ後

に日本向けにリメイクされTV放映されたのを観た。

 

原著者のジェームズ・クラベルは英国人作家である。物語は、17世紀前半、

オランダが海洋国家として世界を制覇し、最も輝いていた時代にオランダ商船隊

が遭難して伊豆に漂着することから始まる。原作はイギリス、舞台は日本、映画

化はアメリカ・・・とグローバルであった。日本でも一時期大評判となった。

 

 全くのフィクション型式であるが、明らかに関ヶ原の戦い(1600年)前後

の史実を踏まえたプロットとなっている。イギリス人の水先案内人から日本へ帰

化し、後に徳川家康の外交顧問となった三浦按針が物語の主役のモデルである。

前々回の第24話で触れたリーフデ号の豊後漂着、豊臣秀吉の末期、石田三成と

徳川家康の確執などが描かれている。

 

 さて、W社長はこの英語小説を読んで、ご自身がその中味に感動されたのであ

ろうが、それを西村に読むよう推薦されたココロは何か。

 

物語の主人公は日本という「極東の異文化の国」で、東の家康と西の三成との

天下取りの争いに巻きこまれてゆく。彼は青い目のサムライとなって、美貌の女

通訳の助けで、日本人の生き方、考え方を教わるのである。安土桃山時代末期の

日本人の生活が、豊かではないが、とても健康的で、文化的であることに気付く

のである。隣人同士でも、行きずりの他人同士でも、互いに挨拶をし合い、もめ

事があっても折り合いをつけながら円滑に生活している。庶民の階層でも、男女

とも毎日のように入浴して下着を取り替える衛生的な習慣に驚くのである(当時

のヨーロッパでは考えられなかった習慣)。

 

 アイソマーズ通信に先般(2011.6月)拙稿、書評「幕末日本探訪記〜江

戸と北京」が掲載された。これは幕末、1860年頃の日本人の姿〜生活実態を

描いたものである。上掲書とは時代が260年も後へずれている。しかし、両書

ともにイギリス人の目で見た日本人の生き方、考え方について、ほぼ同じ語調で

驚きと賞賛を述べている。「極東の異文化の国」である日本が、彼等の西欧とは

異質ではあるものの、意外に整然と完結した生活文化であることを発見するので

ある。

 

W社長が日本好きである理由は、多分ジェームズ・クラベルの小説の描写内容

と同根なのであろう〜そしてW社長はこの小説を西村読ませて、その辺を西村に

汲み取らせようとしたのであろう・・・と推測する。

 

                             (つづく)