チェルノービル原子炉特有の特性と事情

 

事故は炉のテスト中に起こった。本来そのテストは日中に行うはずだったのが、他の発電機が故障してこの炉は電力供給に使わなければならなかったので、テストは夜の1時近くまで延期された。当然昼間の係員は交代して、真夜中の係員にそのテストは受け継がれた。しかし、真夜中の係員が、自分が受け継ぐとは思っていなかったテスト運転について十分に理解してなかったことも、事故の原因に繋がった。

 

この炉(設計出力は3200MW)では出力を下げる時600MW以下にしてはならないと考えられていた。それ以下では不安定になって危険という意味である。それにもかかわらず、テストの始めようとした時には実際の出力は30MWに落ちていた。そこで出力を増すために、運転員たちは制御棒を抜き、出力を200MWまで回復させた。

 

さらに事情を複雑にしたのは、ゼノン135(半減期9.2hr)の影響であった。原子炉では出力を急に下げるとゼノン135の同位元素が急激にたまり、制御棒をどんどん引き抜いてゆかなければならない。このテストの際も、ゼノン135の影響を克服するために、炉の制御棒はほとんど炉の外に出された状態であった。もし、何かの理由で炉を停止しなければいけないときは制御棒を挿入するが、この炉での制御棒を挿入するする速度は遅かった。さらに、制御棒を入れ始めたとき効果がもっともよいのは、制御棒の先端がろの中央付近にあるときで、この時のようにほぼすべての制御棒が炉の外に出されている時は、制御棒の先端は炉の端の方に位置していたわけで、動かし始めた時には非常にわずかの効果しか出なかった。

 

原子炉の出力はと蒸気系統からも大きなフィードバックを受ける。たとえば、発電機の負荷の急変はタービンコンデンサーにおける凝縮水の温度を変化させ、さらには炉心の給水温度を変化させる。その結果、炉の中の蒸気の体積が変化し、原子炉に正か負の反応度をもたらし、炉の出力に変化がおこる。同様のことが冷却水循環ポンプの回転速度や、冷却水循環系の流量をの変化などによっておこる。このような炉の変化をテストにより調べておくことは尤もなことである。

 

しかし、出力係数が正であると、蒸気系統からのフィードバックで出力が増した時、炉自身でさらに出力を増やしてしまう。この歯止めがないと出力はどんどん増し、爆発にいたる。

 

(続く)