(6) ロンドン

 

この旅の最後の3泊はロンドンであった。といっても最初の日はエジンバラからの列車で半日はなくなるし、3泊の後はヒ-スロー空港から帰りの飛行機に乗らないといけないから、正味は2日半。ロンドンは以前に来たことがあったが、早足で通り抜けただけなので、その地理さえよく頭に入っていなかった。

 

ホテルはロンドンの中心に近く、地下鉄の駅からもすぐである。しかし切符の買い方が分らず、無人の一個しかない切符売場の前で立ち往生し、後ろに長い列ができてしまった。すぐ後ろの人の援助で何とか買えたのだが、汗顔の至りとはこのこと。しかし、馴れない者にとっては、見知らぬコンピューターソフトを即時に使いこなせと言われているのと同じで無理である。一度切符を買ったらその日一日は地下鉄にもバスにも通用するので助かった。

 

着いた日の午後は、ホテルのすぐ近くのBritish Museum(日本語では大英博物館)で多数の古代エジプトの石像の展示をみてから、そのあとKings Cross駅にもどった。この駅はスコットランド方面行きの列車の発着する駅で、エジンバラから来たときもここで降りた。ハリーポッタの映画に何度か出てくる駅で、映画の中では9 番線というのがあった。そこへ行くためにはウィザード達はレンガの壁を通りぬけるのだが、そのホームが見れないかとこの駅にやってくる人が多いので、駅がわざわざ9 番線というのを作ったという。小学三年の孫の健太のために写真を取るためホームを見に行ったわけだ。彼は夏休みの始まるころまでに確か4巻か5巻までを英語で読み終えたのである。

 

駅ではあらゆるところに、そのホームへの方向を示すサインが出ていたので、割合簡単に見つかったのだが、駅の外側に小さな掘立て小屋を作り、その奥のレンガの壁に9 番線の札を吊るし、ショッピングカーとを短く切ったのが壁に立てかけてあって、まさに子供だましのホームであった。つまり半分レンガの壁に入ったところを見せかけてあるのである。この駅は他の場所も映画に出てくるのだが、現在駅全体が大改修中で、昔のホームの上を渡っている陸橋のようなものは全部板塀に囲われていて、映画の中の風景はどこにも見つからなかった。

 

2日目は、遊覧バスに乗った。ロンドン遊覧バスは2階つきのバスで、好きなところで乗り好きなところで降りてよい。通る場所の説明のテープが何か国語で流れていて助かった。ダイアナと一緒に亡くなった彼氏の父親の経営するハロッズデパートにも行った。遊覧バスはロンドンの街中の概要を知るのに役にたつ。

 

その日の夕食には、ピッカデリーサーカスからほど遠くないジミーオリバーの経営するレストランに行った。ジミーオリバーというのはイギリスの若手のシェフで、BBCやアメリカのPBSで料理の番組を多数見せていてDVDでも買える。アメリカでも非常に有名なシェフである。鳥の丸焼きやスパゲッチの作り方を彼の番組から習ったことがある。孫の健太もDVDで彼の料理法を見るのが大好きで、その後決まって自分もやると言い出す。

 

ともかくそのレストランへ行く途中、St Martin in the fieldとしてよく知られたクラシックオーケストラが本拠にしている建物の前を通った。(映画アマデウスでサウンドトラックを録音したのはこのオーケストラである)

 

ジミーオリバーのレストランは非常に混雑していて40分待たされた。といっても、裏のテラスのテーブルでビールを飲んでいればよいので気にならなかった。さすが、このレストランの味は悪くなかった。中でもマリネートした生のイワシの前菜が気に入った。日本でならこんなものを作るのはわけないはずだが、どうしてないのだろう(注)。しかしメインコースではスクイッドとカトルフィッシュのメニューが半分を占めていた。イカをレストランで食べようとは思わないが、ヨーロッパではイカの種類でもスクイッドとカトルフィッシュを必ず分けて書くから面白い。

 

最後の日にはロンドン郊外にあるキューガーデン(Kew Garden)に行った。広い植物園で、徒歩で全部を歩き回るには広すぎる。ここでは植物の収集の徹底ぶりに驚かされた。たとえばヒイラギの場所では何十ものヒイラギに属する木をそろえて植えていた。アメリカには2種類しかないのを知っていたが、こんなに葉の形、色、背の高さ、などなどの異なるヒイラギがあるのを初めて知った。温室の中もすごい。熱帯植物で虫が入ると蓋の閉じる植物があるが(名を思い出せない)その猛烈な蒐集、ハス池も見事であった。

 

その後ロンドンの西部に新しく出来たというメガモールに寄った。アメリカのモールとは建築様式がかなり違って面白かった。駐車場が全然ないことも違う。その代わりバスや電車の駅がモールを出るとすぐのところにあった。もう一つ異なるところは、ものすごい数のレストランがメガモールの周辺で敷地内に並んでいたことである。

 

ヨーロッパではマリネートした生魚に出くわすことが時々ある。以前パリのシャンゼリゼーにコペンハーグというレストランがあって、そこではマリネートだけを専門に食べさせていたことがある。数年後に行ったときは店を広くしていたが、マリネートは影を潜めていた。今もコペンハーグがあるかどうかは知らない。