隣家の芝生

 

西側の隣家は、我が家が今の家に越してきて4年くらいしてから越してきた。3人の子供がおり、一番うえの息子はそのころ4歳くらいで、桑の実が木から落ちる6月の頃桑の実が落ちるのを集めるために大きな布を木の下に敷いておくと、自分で容器を持ってきてそれを盗んでいった。その下に双子の娘が居る。今ではみんな大きくなって、それぞれの車に乗って出かける。

 

旦那は調理した食品をレストランやカフェテリアに卸す会社の経営者らしく、羽振りが良い。家族5人がいつも新車を買い換えて乗っていることから、それが伺える。

 

その家の芝生は業者が毎週木曜日にやってきて、4人の労働者が4時間以上かけて芝刈りと花壇の手入れをしてゆく。表庭の裏庭はいつも整然としていて、我家としては何も文句がない。

 

我が家の庭の広さは西隣より少し狭いかもしれないが、会社に委託するような金はないから、芝刈りは私が芝刈り用のトラックターを用いて一人でやる。仕事の質は変らないと思うが、なぜか隣よりは遥かに短い時間で終わる。西隣の花壇は業者に任せきりであるから、ありきたりの植物が多いのにたいし、我が家のは、そこらの植木屋では売っていない植物や花が多い。

 

東側の隣家はOO国の隣国とされているO湾から来た人たちで、中学高校大学生の三人の子供が居る。共働きで、旦那は銀行のコンピューターのソフトウェアが専門で、ハッカーによりコンピューターが狙われることの多い今日、今をときめく高給職業である。その家は3~4年前大改修を行い、そのとき地下室を広くするため土をダンプトラックで何十杯も運び出した。改修工事が始まる前に我が家の私道を工事人の車に使わせてくれという申し入れがあり、ダンプトラックがそんなに出入りするとは知らなかったときなので、気安く同意してしまった。

 

隣と我が家は、まったく独立の私道で道路から上り坂で入ってくるのだが、家のところまで来て舗装には境目がなくなり、お互いにどちらの家にも行けるようになっている。ところが、我が家のは道路から直角に入ってくるのに、隣のは坂道を斜めに曲がりくねっていて、おおきな工事業者のトラックが入ってくるのが困難な上、バックが不可能である。

 

重たい土を積んだダンプトラックと、さらにブルトーザーの行き来で、私道の舗装はぼろぼろになり、こちらが車で通るのも危険になってしまった。そこで何度か、ダンプトラックやブルトーザーの行き来をやめてくれ、そして壊れた私道の修理をしてほしいと申し入れたが、その都度、誰かがくわを持ってきて、壊れたアスファルトの瓦礫を転がす程度で、根本的な修理はしようとはしなかった。ついに我慢しきれなくなって、訴訟を起こしかけたが、それを知るや私道の舗装を全部新しくすると言ってきた。しかし、すべては業者がやったこととして、自分たちは一言も謝らなかった。それにしても、半年以上瓦礫の私道に悩まされた。

 

家の改修は終わっても隣の家の庭は荒れていた。それは芝生の手入れをせず、雑草もいたるところで伸びほうだいで、それを刈ろうともしなかった。家の改修が住んだのだから今度は庭の手入れをするのかと期待していたが、裏庭の上り坂の部分に大金をかけて石段にやり直した。裏庭はそこからもまだ先があり、そこの芝刈りをしなければならない。しかし、芝刈機が通れるはずのせまい坂道は草が生えすぎて通れない。その草を刈って通れるようにしようともせず、芝刈り機を押す息子は我が家の庭を通って上のほうへゆくのである。

 

前置きが長くなったのだが、もう少しある。その石段の端に車庫がある。その車庫は坂のため、後ろの方が半分土に埋もれている。ところが土の圧力で、後ろの壁が内側に大きく湾曲して、壁には大きな亀裂が入り、いつ中側に倒れるかわからない。そのために横の壁もストレスのため亀裂がはいり、すずめが巣の材料をくわえてそこから車庫のなかに入ってゆく。あるとき、そこの旦那を捕まえて、そのような状況を知っているのかどうかをたずねた。そして、今修理するなら可能だが、一度壁が崩れたら、建物全体が崩壊するするであろう予測を話した。しかし、一向にこの問題に取り組む様子がない。

 

もしこの車庫が崩壊し、ブルトーザーやダンプトラックが入らなくてはならなくなっても、もはや我が家は私道の交通許可はしないつっもりであることに、彼らは気がついていないらしい。

 

芝刈は息子の仕事と決まっているらしい。庭の中央は芝刈りをやるが、周辺は草が背丈ほども伸びていて醜い。芝生を刈ったときに出る草(つまり庭のごみ)は我が家との境のところに山済みにしているのも汚しい。庭の坂がきついので、芝刈りは手押しでは無理であるのに、トラックターは何年もまえに故障したまま修理もしないし、新しいのを買ってやろうともしない。金がないのではない証拠に、最近この夫婦は同時に色違いのベンツを一台ずつ買ったばかりである。

 

こんな光景を毎日見てはらはらしていなければならないのは我が家のほうで、隣の家族からは見えないのであろう。葡萄を隣との境に植えたことをこの前の随筆に書いたが、実は少しでも隣の庭や崩れかかる車庫が見えないようにするための苦肉の策である。

 

中村省一郎 (7-14-2011)