アイソマーズ通信 2011/01/11

 

年頭にあたり 山本經二

 

数え年で年齢の節目を祝う年祝い、いわゆる賀寿の習慣は、平均余命が著しく伸びてきたわが国ではそれほど珍重されなくなってきている。還暦(六十二)を迎えて後は、古希(七十)、喜(草書体)寿(七十七)、傘(仐)寿(八十)、米寿(八十八)、卒(卆)寿(九十)ぐらいまでは当然と思われる昨今で、我がアイソマーズ諸兄が間もなく喜寿を迎える年頃となっているのは、ご同慶の至りです。

 

白川 静先生によれば、「卒」は、卒業、卒中、卒然の用例にみるように、終える の意味である。略字体からして、寿の言葉として相応しからず、「鳩寿」と呼ばれることを希望するということである。[ ] 随筆集 桂東雑記(平凡社)「鳩寿の弁」:cf) http://www.tmghig.jp/hospital/notice/column/ryokujyu.doc

 

最近「化学者の寿命と動力学」なる興味深い読み物を尾崎 萃先生(東工大・名誉教授・九十一歳)から紹介された。[ ] 化学と工業37 巻 第3号(1984187. いま、図 年齢と生存率との関係(1981 年現在)を示すことができないので、その概要を述べると、京都大学理学部化学科卒業者名簿(1981年版)から2,245 名(男性 97%, 1901 ~ 1981年卒業)について、年齢(横軸)-生存率(縦軸)をプロットすると、およそ50 ~ 80歳までの死亡率(生存率の逆数)は、ほぼ綺麗に一次反応速度式に従う(死亡事象は個人固有の性質であるので、一分子反応速度的であることを示す)。そして、k1 = 0.09 ~ 0.10 year -1 で、死亡率の倍増期間は約7.5 年となる。これでプロットは一次理論曲線に極めて良く一致している。筆者(荒木長男氏)は、化学(現場)が危険業務と考えられているのに反し、意外に長命であり、理論限界寿命は86歳で、約半数近い方が喜寿を迎えることができそうだ、と結んでいる。けれども、私にはこのプロットで、75 歳を中心とする兵役世代(いま生存なら105歳)、および60歳辺り(学徒動員世代、90歳台)で明らかな偏奇が観て取れることに胸を突かれる思いがする。

 

われらがアイソマーズは四十余名と母集団は小さいが、現在の生存率が約80%強であり、上の図のプロット上の60%を大きく上回っていることは、再びご同慶に思うところであると同時に、既に鬼籍に入られた8名のアイソマーズの御冥福を、改めてお祈りしましょう。