アメリカの教育改革(1)

 

アメリカの公立の教育制度は1960年代にはその施設のよさ、小さいクラス、教科書の内容などで世界一の良さを誇ったという。しかし20世紀後半には学力は世界のOECDに属する国の中では中以下で、OECDに属さない国でもアメリカより高い国がいくつもある。一方企業から見れば社会に出てくる若者たちは学力が足りないので、雇用者の必要な社員が見つからず、雇えないまま空席が多いという。

 

私の大学院で教えた経験では、大学卒業生の学力が足りず大学院へはほとんどが入れない。大学院では中国、韓国、インドから大勢の優秀な大学院応募者が来るから、彼らを助手として雇って研究のレベルを保っている。

 

教育制度を改善して教育レベルを上げなければ、将来のアメリカは政界の中で凋落するのみという危機感を強く持っているのは、教育の高い知識階級である。しかし連邦政府はこの問題を長い間本格的に取り上げようとはしなかった。しかしオバマ大統領はこのことの重要性を訴え、教育制度を大幅に変えようとしているが、共和党の妨害にあってなかなか進展しない(注1)。

 

アメリカの教育制度の悪弊のひとつは、教員組合の力が強く(注2)、一度テニア(永年雇用の権利)を持つと解雇も減俸の可能性もなくなることである。したがって、生徒の教育への熱意を失った教師が大勢いて、どんなにその学校の教育レベルが落ちても何の改善もしなくなることだといわれる。

 

貧困家庭の多い都市中心部の学校では、生徒が字も読めないままトコロテン式に卒業してくることが多い。しかし、アメリカのは個人の団体がチャータースクールを作ることを許されていて、チャータースクールでは意欲ある教師を雇い、独自の教育法を行いことが許されている。費用は公立の学校で生徒が減った分だけ

チャータースクールに支給される。そのようなチャータースクールでは非常に生徒の学力が上がることが明らかになっている。しかし不幸にして、チャータースクールの数は非常にすくなく、入学は非常に困難である。

 

現在の政府の教育改革の方針は、教員組合の力を排除し、優秀な教師の待遇を大幅に上げることである。現大統領はそのために連邦政府が金を出すことを提案している。しかしこのような改革案は共和党の反対にあい難航を続けるばかりである。

 

(注1)オバマ大統領就任当事から共和党の議員の中に「次回選挙に共和党に勝たせることを至上の目標にし、オバマ大統領の成功をすべて阻むようオバマ政策に反対する」秘密結社のようなものが出来ていたことが最近暴露された。

 

中村省一郎  8-31-2012

(注2)教員組合の力が強く手がつけられない例として次のような事件があった。ロサンジェルス市内の学校でのこと、ある教員が精液を生徒に舐めさせたのである。親たちも政府の教育委員会も怒り、その教師を解雇しようとしたが、教員組合と市の契約で解雇が出来なかった。したがって学校側は5万ドルの特別退職金を出すから、辞表を出してくれと、その教師に頭を下げたのである。