アメリカの教育改革(3)

 

アメリカの教育問題を真正面から取り組んでいる団体がある。Students Firstという団体で、ミシェル・リーにより設立された。この人は韓国系の女性で、1969年ミシガン州アン・アーバーで生まれ、コーネル大学(学士)、ハーバード大学(修)で教育学、政治学を学んだ。父親は物理学者。親の勧めでミシェル・リーは韓国に一年留学している。

 

リーは2007-2010年ワシントンDCの教育総監に、当事の市長であるエイドリアン・フェンテイ(黒人)により任命された。その3年間に、リーはDCの教育界に大鉈を振るった。成績の悪い教師や校長を容赦なく解雇し、また学校を統合し評判の悪い学校を閉鎖した。この3年間にDCの平均学力は見違えるように向上したという。しかし反対意見を持つ人や、異論も多く、フェンテイ市長の任期が切れるとともに退職した。

 

その後、Students Firstという団体を作り、教育改革を訴えて、アメリカ全国に活動の範囲を広げている。主な主張は、能力のある教師を優遇し、現在のテニア制を廃止し、長年勤務した教師でも能力のない教師は退職させる、教育を政府や教員組合に任せず、親が積極的に学校の教育に介入して行く必要性をうったえている。これまでに2本のドキュメンタリー映画を作り、そのひとつは今回の共和党大会、民主党大会の双方で上映された。Students Firstの主張はいま多くの州で注目され、採用されつつある。ただ、前に紹介したフィンランドの教育改革が参考にされていないことが残念である。

 

アメリカの大問題である教育改革に初めて本格的な旗揚げしたのが韓国系の女性であることは非常に興味深い。韓国の教育制度と日本のと非常に似ている。また資源のない国で、しかも貧乏な生まれの者に開かれた道はただひとつ教育しかないという根本的な考え方が両国にある。ミシェル・リーはアメリカ生まれではあるが、韓国人の両親のもとで、アメリカの教育制度を一般のアメリカ人とは異なる角度で見ていたに違いない。

 

中村省一郎  9-10-2012