麹菌の危険性

 

数週間前に麹について書いたが、最近NHKの肝入りの麹の番組が続き、期せずして麹ブームが巻き起こっていることがわかった。麹は日本特有の素材であり、その使い方が良く知られ利用されることはまことに好ましいことである。しかし、麹にも危険の落とし穴があることをなるべく多くの人に知ってほしい。

 

麹菌はカビの一種である。一般のカビなら、胞子が浮遊する空気を吸うだけで体がおかしくなることは容易に想像できるし、そのような場所には近寄らないであろう。しかし、麹菌の胞子についても全く同様な注意が必要である。このことがほとんど認識されていない。

 

味噌や醤油を作るときの新しい生麹を扱っていれば、麹から胞子が飛び出すようなことはないが、生麹でも時間が経ち過ぎると胞子が出来て舞い上がるし、乾燥麹は荒っぽく扱うと麹菌の胞子が空中に舞い上がり、それを吸う可能性がある。麹菌の胞子は非常に活性度が高く、蒸した米や大豆などの穀類につくと、そこから麹菌が発生し、2~3日で穀類の表面をコウジカビがうめつくしてしまう。

 

麹菌の胞子は気管支に入ると、気管支の皮膚に粘着し、そこで活動をはじめる。吸い込んだ胞子の量が少ない時は、人間の体は異物を排除する機能があるから問題にならないことがほとんどである。しかし、最悪の場合気管支の皮膚が麹菌で埋め尽くしてしまうことがあることが報告されている。

 

麹菌胞子の粉を少しでも吸うと、非常に咳き込んで苦しい思いをするのは、おそらく麹菌胞子の活性度によるものであることが想像される。したがって、干麹を使う時は、粉を舞い上げないように、注意すべきである。

 

干し麹を扱うのよりはるかに危険なのは、麹作りの際、麹菌を蒸した米に振り掛ける時である。麹菌とは胞子の粉である。テレビの放送で麹作りの現場を見せていたが、平たい容器に広げた蒸した米のそばに人が立ち、麹菌を入れた容器を頭上の高さまで持ち上げ、そこから容器を振って麹菌をばらまいていた。このように高い位置から降りかけるのは、麹菌が落ちる間に分散し、蒸した米になるべく一様に降りかかるようにするためである。

 

しかし、テレビでも明らかに、麹菌は空気を白くするくらい空気に分散して、呼吸のとき体に入る可能性があると思われた。

 

麹作りは素人には難しいといわれ、専門家は素人には勧めない傾向にある。しかし、麹に関心が高まれば、必ずやってみようとする人が出てくるであろう。このような危険性を理解していれば、工夫により危険を避けることができる。一つの方法は、麹菌を二重のガーゼに包み、蒸した米の5cmくらいの高さで、振ればよい。二枚のガーゼを通して出てきた麹菌は非常に分散した状態で蒸した米の上におちるので、吸う可能性は極度に減少する。また、家庭内で行う時は、子供のいないところで行う配慮が必要であるし、また床や近傍の家具の上に麹菌をばら撒かぬように細心の注意することが肝要である。

 

もし読者の知り合いの人に麹を自分で作る人がいたら、麹菌の危険性の話をぜひ伝えてほしい。

 

中村省一郎     2142012