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世界の暗雲

 

去る9月11日はアメリカでは9/11事件から11年目にあたり回顧の行事が行われたが、リビア、エジプトなどではアメリカ大使館が暴徒により攻撃を受け、リビアでは大使を含む4人の大使館員が殺害された。その後数日のあいだにアメリカ大使館の攻撃はアラブ国各国に広がり、約20カ国のアメリカ大使館が攻撃される結果となった。アメリカ大使館だけではなくドイツ、英国の大使館も攻撃され、イェーメンのアメリカ人学校も焼かれた。

 

日本では9月11日に尖閣島を政府が個人から買い上げた。このことが中国人を刺激し、中国の各地で日本に対するデモが始まり、日本製の車、店、工場など日本人の所有する施設が破壊された。中国の警察は暴徒を取り締まってはいるが、今後日本人とその施設の安全は保障される見込みは非常に低くなった。したがって、中国の日本人は全部引き揚げ、通商や現地生産さえもあきらめなければならないかも知れない。もし尖閣島で軍艦からの砲撃が始まるようなことがあれば、戦争である。日本の空海軍は中国のより強いが陸軍の力は弱く、もし尖閣島に中国軍が上陸してしまったら、日本の陸軍はこれを追い払う力はないという評価がある。そのような危機は意外と早く来るかも知れない。経済的にも、もし中国での生産と通商をすべてやめれば、双方でどのような損害になるのかを検討してみるべきであろう。

 

アメリカでは大使館員の殺害とは別に、もっと大きな問題が起こりつつある。それはイスラエルのナタヤフ首相が、「90%の確率でイランが原子爆弾を完成するのは6ヶ月以内である、いますぐに空爆をしてウラン濃縮施設を破壊しなければ手遅れになる」とアメリカにイラン戦争開始をよびかけた。アメリカの中では、大統領候補のロムニーがイラン戦争の意見で、共和党には前大統領候補のマッケインを始めイラン戦争を主張する鷹派が多い。一方、イランはナタヤフの発言に対し、「もしわが国が攻撃されたら、反撃によりイスラエルは跡形もなくなるであろう。中東のアメリカ系の施設も全部破壊する」と警告している。

 

イラク、アフガニスタンなど兵力の弱い国でも、戦争を始めたら10年では収まらず、これまでにアメリカだけで5000人の兵隊を死に、その10倍の立ち直りの困難な傷病兵が出来た。また莫大な赤字を生み出した。

 

イランは技術的にも軍備でも高度な国で、軍備の強さは世界では8位(日本は7位)。イランとの戦争はイラク、アフガニスタン相手の戦争より何倍も困難であろうといわれる。さらに、イスラエル対イランの戦争となれば他のアラブ国はみなイランの側に立つだろう。もし政府がそうでなくても、今回の大使館襲撃事件からも明らかなように、イスラエルに反感を持つ暴徒たちが妨害してイスラエルとアメリカが戦争のための基地をおくことも出来なくなる。

 

大きな戦争にならなくても、イランの原子力施設の空爆ともなれは、イランはサウジアラビアなどの石油産地から石油を運び出すとき必ず通らなければならないペルシャ湾のホルムズ海峡を閉鎖することは間違いない。世界の石油の20%はここを通るから、世界の石油は何倍にも高騰するであろう。

 

これらの見通しに関して一般のアメリカ人はひどく無知無関心なのであが、イスラエルのイラン爆撃はアメリカの同意なしでもやる可能性が強い。しかし今回の選挙で、もしロムニーが当選すれば、すぐに戦争に同意することは間違いない。

 

中国関係の話題に帰るが、アメリカも大きな中国問題を抱えている。それはアメリカ内の製造業が、中国の進出によってますます縮小していることである。近年のアメリカの不況は製造業が減るために起こる失業率の増大が原因であるといっても言い過ぎではない。この問題は意外とマスコミでも取り上げなかったが、最近、両大統領候補がこのことについて方針を述べている。オバマ大統領の意見は、国内製造業を振興させるために、国内製造業で雇用を増やした会社には補助金を与えることを提案している。一方、ロムニー候補は、中国の為替レートの変更と不正な交易の是正を力ずくで(軍備を用いて)変えさせる、と主張している。

 

ロムニーが当選する可能性は低い。彼の発言はつじつまの合わないことが多く、外交に対して無責任な失言も多く、健康保険、中絶問題でも支持する人が少ないからである。しかし、もし当選すれば、イラン戦争だけではなく、中国に対しても何らかの軍事力を用いたやり取りを行うであろう。

 

イランは北朝鮮と原子力関係の情報交換を行っている。中国と北朝鮮は近い関係にある。イラン-イスラエル、イラン-アメリカが戦争関係になれば、中国はどのような立場を取るか。尖閣諸島問題とイラン戦争は直接の関係はないが、同時に考えなければならないので複雑である。

 

中村省一郎  9-17-2012