北ミシガン旅行

 

6月の最初の週末にかけて、2泊3日旅行で、ミシガン州の北端にあるシャールボイ市の近くにある苗木農場とも言うべきところを訪ねた。

 

車で行けない距離ではないが7~8時間はかかり、一人では長時間過ぎるので空を飛ぶことにした。飛行時間の合計はさほど長くないが、シカゴで乗換えがあり4時間待たされ、トラバース市で降りてから車を借りて約1時間走らなければならないので、所要時間は自分の車で行くのと変わらないが、それでもかなり楽であった。

 

最初の日はコロンバスを朝出たのに、着いたころには夕方近くであった。その日はシャールボイのホテルまで着けばよいのでゆっく車を走らせた。高速道路はなく時々村のような集落を通り抜ける。それでも約100kmの距離の走行中ほとんど対向車と出会わなかった。

 

このあたりはオハイオの田舎道を走るのとは景色がまったく異なる。道の両側は森が多く、畑といえば苗樹畑がほとんどで、食料生産の畑は見当たらない。沿道にある店は必ず庭園関係の店であった。

 

次の日の約束の9時半には、約束の農場に着いた。セントラルレイクという村のはずれにあり、看板があったのですぐに分かった。大きな農場というので、雇い人がいて、事務所があって、などを想像していたが、母屋は二階建ての住宅があるだけで、農場主の家族が住んでいた。彼は64歳といっていたが奥さんがものすごく若くチャーミングな人。

 

丁度一月まえにトウルーズ旅行したが、その情報はこの農場のインタネットウェブサイトから得たのがきっかけであった。そのウェブサイトの農場も見たくなったから来たのだ、と説明した。農場主の方もオハイオからどんな奴がやってくるのかをインターネットで調べたら、アマゾンで買える私の書いた数学の本を見つけたので、そう危険な人物ではなさそうと見当をつけていたらしい。

 

家の中に招かれ、しばらく話をした後、農場を案内してくれることになった。農場の総面積は220エーカー、苗樹の数は44000本になるという。木を掘ったり運んだりする機械は大きな納屋にかなり持っている。最初に見せられたのは、温室とその近くの土地に植えてある実験的な植樹であった。その次に、山の中を走れる小さな4輪車にのせられ、道のない山を越えて苗樹畑に向かった。ところが、その数日前からの強風と雨で、かなり行ったところで倒木が横たわっており、チェーンソーで木を切らないと先へ進めなくなった。そこで4輪車をのりすてたまま、雨の中山道を歩いて家まで戻った。雨の中ではあったが、久しぶりの予期せぬ山歩きも悪くなかった。山の中にスギナやぜんまいがたくさん生えているのも面白い。

 

母屋に戻ったとき、とゆから水の出るところにたまった丸い小石を拾い上げて見せてくれた。これは珊瑚の化石であるという。珍しいのでもらってきたが、珊瑚の化石がミシガンで出るというのはそれほどの驚きではなかった。というのはミシシッピ川の東側は6億年前は海底であったことを知っているからである。コロンバスの庭でも、巻貝の化石のついた石が見つかる。

 

ミシガン湖の東湖岸から20kmくらいの地域は特殊な気候条件にあるという。冬は雪が多く高さ3m以上に積もる。雪が多いのはミシガン湖が冬も凍らず蒸気を出すためである。だから冬住むのは非常に困難である。しかし雪のため、木の苗が保護され、そのために木の苗を植える農場がこの地域に集中する。りんご、梨、桜、クリスマスの樅、カナデイアンメープルなどあらゆる木の苗がこの地方で生産されているという。これで、前日車の中から見た光景の謎が解けた。

 

コーヒを飲みながら雨の上がるのを待ったが、一向にやまず、1時間ほど話をしてから暇を取った。まったく予期しなかった農場の様子と見当違いの見学結果となったが、農場主やその奥さんとの話も楽しかったし、来てよかったと思った。

 

帰りの飛行機は次の日の朝早くであるから、午後はシャールボイの周辺をドライブした。この地方(ミシガン州北西部)は湖の非常に多い所で、その湖岸には夏だけ人の住む別荘が並んでいる。秋には紅葉の名所でもあるようだ。

 

シャールボイからわずかに離れたところに、キャスルファームという名の庭園があったので入場料を払って入ってみた。大きな建物は城のように作ってあり、その歴史が面白い。19世紀末シアーズ(アメリカのメールオーダーの老舗)の社長が建て、そこでシアーズで売る農業機械の製作を行っていたという。その後使わなくなってから50~60年荒れるがままに放置されていたのを1990年代に修復され、今は庭園として、また結婚式場として使われている。私の行ったときにも5組の結婚式がある日で、雨にもかかわらず混み合っていた。

 

巨大な母屋のあちこちにヨーロッパの城に見るような円形の塔がいくつも立ててあるのでキャスルという言葉がこの庭園の名前に付いていることは明らかであった。このようなものを見るときヨーロッパ中世の城と比較してはならない。ヨーロッパ中世の城を見たければヨーロッパへ行けばよいのである。しかし田舎くさいキャスルファームも、アメリカの歴史の一端として捉えると非常に面白い。

 

3日目はトラバース飛行場から8時過ぎの便に乗らなければならない。シャールボイのホテルを早朝4時に出た。帰りの運転はほぼ真南に向けて走る。雨はやんでいて、しばらく走ると夜が明けてきた。ところが空が明るくなり始めるのが真北からのように思えた。さては、オハイオよりは1000km近くも北に来たせいで、太陽は北から昇る? と思ったが、その影響もあったとは思うが、雨雲が北から晴れてきたせいのようでもあった。

 

中村省一郎 6-21-2012