オバマ大統領当選を祝して

 

アメリカの大統領選挙は11月6日におこなわれ、7日未明にはオバマ大統領がロムニー候補に対して圧勝したことが確定し、次の4年間の政権を続けることがきまった。アメリカの選挙は代理人によっておこなわれ、代理人は有権者の投票で決まる。たとえばオハイオは18人の代理人を出すが、オハイオ州内でオバマへの一般投票がロムニーへのより多ければ、オハイオの代理人の全部がオバマに投票をおこなう。そして、オバマに投票する代理人の合計は300人を超え、一方ロムニーの合計は200をわずかに上回る結果となった。したがって、オバマは次の日の午前1時ころ、自分の選挙事務所のあるシカゴに来て、当選の演説をし、同じころロムニーは敗北宣言と和解の短い演説をした。

 

選挙の開票があるまでは、非常な接戦であると見られ、ロムニーも最後の最後まで敗北をみとめなかった。今回の選挙では、誰もがロムニーが勝つ可能性は五分五分と考えていた。

 

日本の放送では、オバマが勝ったのは戦略が良かったからだと報道されているようだ。しかし、戦略もさながら、彼の過去4年間おこなってきた政策が正しく、またこれから4年間の政策の主張が正しいこと、彼の選挙演説の内容はいつも一貫しており、嘘偽りを言わない。一方ロムニーのほうは、主張がすぐに90度180度と転換して、本当は何が彼の考えなのか分からなくなるほどご都合主義なところがあること、さらに投票者を故意にだます見え透いた嘘も多かった。それでも、さまざまな理由でロムニーを支持する層は多かったために接戦となった。

 

アメリカにとっても、日本や世界にとってロムニーにならなくて、非常に幸いであった。その理由は二つある。一つ目は彼の政策。非常に浅薄で、少数の金持ちの利権に偏っている。ブッシュ政権のやり方と似ており、新たな戦争たとえばイランとの戦争を始める可能性が高い。教育制度改革のための歳出を大幅に削減するだろう。温暖化や環境問題を無視して石炭規制を大幅に緩めるであろう。共和党には、宗教的に非常にかたくなな思想があり、たとえばどんな理由であろうとも中絶には反対で、たとえ強姦による妊娠でも中絶を犯罪とみなそうとする過激派が多い。ロムニーの意見はふらふらとして決まらないのは、共和党右派からの軋轢と、有権者のご機嫌取りのための両方であると考えられる。彼は確固たる自分の信念というものがないようだ。

 

二つ目は、彼の人柄とその取り巻き陣の不愉快な顔ぶれである。彼は金儲けがうまく、億万長者である。その儲け方というのは、つぶれかけた会社を買い取って利益をとりもどすことで、従業員の大半の首をきり、製造部分は出来る限り中国などに外注することが中心となる。10数年前の映画で、Beautiful Woman という題の映画があった。若く大金持ちの企業家が夜の女とのロマンスに陥るが、その企業家は自分の商売のやり方と夜の女の商売は本質的に変わらないと気が付く。ロムニーの金儲けの方法は、この企業家のやり方とそっくりなのである。

 

話がそれたが、ロムニーを応援する有名人というのは、前副大統領候補のペイラント、ニューヨークに住む大金持ちのトランプ、ジョンスヌヌ、ジョンマッケイン、ギングリッチ。皆、人種偏見があったり、意見が非常に偏っていて、いやな連中である。また、選挙本部を牛耳っていたのは、ブッシュ内閣の中枢を握っていた連中であった。

 

ロムニーに投票した人がおおかったのは、南部の州、各州内でも農村地帯、大金持ち、過激的キリスト教信者、人種差別に偏った人、などで占められる。また、こういう地域にはいまだに進化論を認めようとしない人が多数いる。そのような州では、学校で進化論を教えることさえ禁じられている。これらのことからも、ロムニーがなぜ大きな支持を受けるのかが理解できる。

 

だから、そのようなロムニーが大統領になったら、アメリカも世界もまた暗闇のいやな世界に突入していくのではないかと思われたのである。

 

オバマが次期政権をとったとはいえ、すぐに何もかも良くなるわけではない。アメリカは、二つの長い戦争を完全に終了させなければならない、製造業の衰退、不動産価値の低落、巨額の連邦政府赤字、教育レベルの低さ、またヨーロッパの経済不安から来る軋轢、急激に起こりつつある気候の変化、などどれも危機的な問題である。それに下院は共和党が多数を占めていて、オバマの思うとうりにはさせない姿勢を相変わらず示している。望みは、次期大統領がこれらの解決にむかって正しい方法で、国を導いてゆける確信が持てたことである。

 

中村省一郎     11-8-2012