ミット・ロムニーの略歴と人柄

 

現在共和党はハリケーン・イザークのために一日遅れて今日開会となる。ミット・ロムニーが共和党の大統領候補として正式に指名を受けることになっている。

 

今年57才のロムニーはモルモン教の家庭でミシガン州で生まれ、父親は大統領候補として出馬したこともあった。モルモン教であることも災いして成功しなかったが、腕の立つビジネスマンであった。

 

モルモン教についてはアメリカ人でもよくは知らない人がおおく、今回の選挙戦ではテレビニュースがモルモン教についての取材を行い報道している。モルモン教はキリスト教の一宗派であり、1929年Joseph Smith, Jrにより開められた。ポリゴミー(多妻)を(19世紀終わりころまで)認めており、このために他の宗派から何度も迫害をうけ、最初は本部の教会は最初ニューヨークにあったが、迫害をさけるためにミシガン州に移り、さらにミゾーリに移り、それでも迫害が減らないのでユタ州に移った。

 

モルモン教徒に共通していえることは、コーヒーなどのカフェイン入りの飲料とアルコールを一切口にしない。20歳前後に国内国外へ2年間の伝道に出かける。この2年間の伝道活動は社会に出る前の若者たちが社会に対して目を開く究極とも言える教育になるという。費用は子供のときから貯め始める。

 

教会には信者以外は絶対に入れない。また外部のものに教会内の事情を話さない。このためにモルモン教について知らない人が多い。信者間で経済的、教育的、事業的な助け合いが非常に緊密である。モルモン教徒には経済界で大きく成功する人が非常に多い。大会社の多くの最高幹部がモルモン教徒であることが指摘されている。

 

さてロムニーのビジネスの歴史はベインキャピタル(Bain Capital)の成功と繋がっている。この会社は投資会社で、投資とともに経営にも参加してその会社の利益を上げる。ロムニーは次々と成功していくつもの会社を育て、彼自身大きな財産を作った(注)。しかし投資会社だけにとどまらず政界へ乗り出すことに興味を持ち始める。2002年のコロラド州の冬季オリンピックで、オリンピック委員会の不手際のかめに開催が危ぶまれたとき、彼はトップマネージャーとして招かれ、コロラド冬季オリンピックを成功させた。

 

さらに冬季オリンピックの終わる直前マサチューセッツ知事選挙の機会がやってきて、その選挙に勝ち抜きマサチューセッツ知事となった。マサチューセッツは共和党嫌いの州で、ここで成功するためには州の政策を徹底的に民主党の政策に沿うようにすうることで成功した。しかしマサチューセッツ知事は一期でやめ、次に目指したのは2008年の大統領選挙であった。このときは共和党の指名でマッケインに破れ実現しなかった。

 

このように見てくるとロムニー氏は有能な事業家であることに間違いはない。またマサチューセッツ知事に実績でも、目標を決めたらそれを必ず成功させる実力のあることを示した。

 

彼の強みは実業での大きな成功の経験で、アメリカの中小企業を盛り立てるのに貢献するであろうという期待が大きい。一方、共和党からの立候補で、かれの政策はマサチューセッツで行った政策の正反対を主張している。このために、ロムニーの根本的な考え方はことにあるのかと疑う人が多い。「時と場合により主張の立場を変えるので、信用が出来ない」という意見が多い。さらに、ラテン系アメリカ人、黒人の支持は皆無に等しく、副大統領候補にライアンを指名したことで、さらに中絶を全面的に禁止するのではないかとの懸念から女性の有権者の1/3しか支持していない。また税金に関して、大金持ちの所得税率を下げるが、それ以下の大半の税は上がることは確かで、これがまた支持率をさげている。

 

 

(注)ベインキャピタルの手法の一つはつぶれかけた会社を安くで買い叩き、従業員の大半を解雇し、製造部門は中国などへの外注に切り替える。それから、収支が良くなるように建て直した部門を他の会社に売るということで多額の利益を上げるようにする。Pretty Womanという映画がある。ビリオネアである若い実業家と売春婦が恋におちいるという話である。彼はつぶれかけた会社を安くで買い叩き、少し手を加えて利益が出るようにしてから高い値段で売り払うことで巨額を儲けていた。ベインキャピタルがこの映画のモデルになったのかも知れないと思われるほど話が似ている。

 

中村省一郎   8-28-2012