書評 ドミニクテユルパン/高津尚志共著「なぜ日企業はグローバル化でつまずくのか」

 

3月下旬から2週間あまり東京に滞在し、コロンバスの自宅に戻ったばかりである。成田空港で飛行機の出発を待つ間、本屋によったら、驚いたことに、入口の目立ちやすい棚に、韓国と中国の経済発展と、日本企業の直面している困難に関する雑誌と単行本が目立った。その中から数冊を選び、飛行機に乗り込んだのであった。

 

最初に読んだのは上の表題にも書いた「なぜ日企業はグローバル化でつまずくのか」という題の本で、興味深く飛行機の中で一気に読み終えてしまった。

 

実は今回の東京滞在中何人かの知人と会って話をしたのだが、異口同音に日本の企業の世界的な地位の凋落を危惧している。その原因の一端として、日本から外国へ出かけるて仕事た研修をする人が極端に減った、いや、言い方を変えると、居心地のよい日本から離れてまで外国で苦労をしてみようという人がいなくなったというのである。

 

テユルパン/高津の本は(1)この問題を深く的確に分析し、(2)新興国の企業がなぜ日本の企業をはるかに追い抜かして発展するのか、さらに(3)日本企業への打開策の提案をしている。

 

この本によれば、1980年代に世界のトップに躍り上がり、世界的ランクの上位に名を連ねた日本の企業が多かったのに、現在は各種の統計で日本は25位前後、別の統計では50位くらいに低い数字もあるという。1980年代にバブルがはじける前日本が世界のトップに立つようになったのは、品質の改良によるものであった。品質の改良は、社内でがんばればできることで、日本の企業はこの点で非常に優れており、現在も品質の良さで勝負を続けようとしているところが多い。

 

ところが、どんな製品が好まれるかは地域によって大きく異なり、また生活習慣によっても使い方がことなる。このことは、それぞれの地域で生活し、また調査をしてみないとわからないことが多い。

 

こういう調査にかけて、日本の企業は非常におろそかであるという。韓国のサムスングでは外国経験のある社員を待遇をよくして、その経験を生かすばかりでなく、多数の社員を海外に送り出して、生活経験させながら情報を集めている。以前に私も書いたことだが、韓国と中国には海外で修士号博士号を取った人が日本より何十倍も多い。だから語学力でも非常に強いのである。それに、日本では最近まで韓国や中国がなぜこのように早く経済発展するかについての情報を聞きたがらなかったという。

 

第三の、日本企業への勧告であるが、どれももっともであるが、非常に大きな変革が必要である。その要旨は、(1)経営陣に地元の事情に詳しい外国人を採用すること、そのためには会議も日本語ではなく英語でやる、(2)各部でも同様に外国人を日本人と差別なく採用すること、(3)外国経験のある人、特に外国でMBAなどの資格を取った人を優遇する、(4)20代30代の若手で優秀なひとなら経営陣に加える。社員を海外の経営法研修所に送り込み、英語で発言できるように訓練する。

 

上の(3)と(4)は若者の海外研修や留学を刺激するであろう。私見であるが、若者が海外に行きたがらない理由は、現在の日本の企業のあり方では、そのメリットがないからである。

 

この本の内容は、私の経験や観察とも非常によく一致している。しかし、日本の企業にとっては、非常に厳しい改革となるだろう。しかし、改革なしには日本の企業はますます凋落の深みに落ち込んでゆくであろうと著者たちは警告している。ぜひの一読を薦めたい。

 

中村省一郎 3-5-2012