鳥の話題もう一つ

 

鳥は季節ごとではあるが人間の家族とよく似た家族構成を作るから、その家族の中で会話があっても不思議ではないのだが、家族内での交信を解読したという報告を聞いたことがない。しかし、こんな光景を目にしたことがある。

 

それは何年も前のことではあるが、6月ころのある朝早く裏庭に出てみると、大きな木のこずえで小鳥が交尾していた。と、雄は雌の上から降りてそばの枝に止まったのだが、雌が両羽を背中の上でこすり始めた。このしぐさはひな鳥が親に向かって餌をねだるときにやるしぐさで何度か見たことがあったが、雌が雄に対してやるのははじめてである。このときは雌が「もっと」と雄にせがんでいるのであって、雄はまた雌の背中に戻り、雌にいわれるままの行動をしていたのである。何をしていたのかの細かいことはわからない。雌の気が済むまで暖めていたのかも知れない。しかし、鳥同士の温かみのあるいじらしい光景であった。

 

巣を作るとき、雌と雄はよく協力をして材料をあつめ、巣の組み立てをする。このときも、いろいろな段階でお互いの同意が必要であろう。雌が卵を抱き始めると、時々は雌のために餌を運んでくるのを見るが、十数日は雄は時間をもてあます。このとき雄は浮気をすることがあることは知られている。生まれた雛のDNAを調べると20%は両親に一致しないという。また、別の雌と巣を作って、二つ目の家族の世話も始めることもあることが報告されている。両方の巣の雛がかえると両親は非常に忙しくなるから、二家族の世話を同時にする雄の協力はどちらにも薄くなり、雌は気が付くに違いない。しかし、マー!クヤシイと怒鳴られるという報告はみあたらない。一方雌の方だって、浮気の結果別の雄の卵を混ぜて抱いていることだってあるはずである。いったん生まれれば、何の差別もなしに育てているように思える。

 

雛がかえったあと餌を探しにでかけた雌が事故にあって帰ってこないという事態はたまに起こる。雄は必死なって餌を運ぶが、雛はまもなく死ぬという。それは雄はひなを羽の下に入れて暖めてやることを知らないためである。

 

中村省一郎

 

PS  私は、庭で小鳥が巣を作り、ひなを育て、それらが飛び立つまでを詳しく観察した経験が何度がある。毎回異なる種類の鳥であった。雛のいる巣を覗いたため、怒った親鳥が弾丸のように飛んできて、額にぶっつかったこともあった。