平成25625

西 村 三千男

私の心臓手術(その5:治療法のチョイス)

 

以下はS病院・U先生の初診 (2013.2.22) の診察室での会話である。

西村:開胸バイパス手術を避けられますか?他の治療法のチョイスは?

U先生:昨年2月、天皇陛下は開胸バイパス手術を受けられた。

あらゆる選択肢の中から天皇陛下がバイパス手術を選択されたのは何故か?

西村:???

U先生:オーソドックスなバイパス手術が患者(天皇陛下)にとって最も有利と判断されたからである。執刀された天野篤医師も陛下にその様にご説明された筈。

西村:開胸しないで、内視鏡によるバイパス手術は?

U先生:私の得意な手術法であるが、今回は西村さんにお勧めしない(理由は下記)。

 

一過性の虚血性心疾患(?)発症(2012.12.4)から、本格的なバイパス手術(2013.4.1)を受けるまでに約4ヶ月も経過している。こんなに時間がかかったのには幾つかの事情があった。@患者である西村は開胸バイパス手術を避けたいと思って、セカンドオピニオン、サードオピニオンを模索した、A患者の病状が差し迫ってはいなかったので、患者も医師も慌てなかった、Bカテーテル施術したE病院・G医師は、ご自身が施術直後から病気で欠勤されて、相談出来なかった・・・などである。

 

U先生は初診の際に、治療法の選択肢を丁寧に図解して解説して下さった。S病院所定の説明用紙にサラサラと手際よく説明図を描かれた。説明の後で、その説明用紙は全て患者に下さるのがS病院のルールになっていた。

 

1.     内視鏡によるバイパス手術(胃大網動脈)

右内胸動脈、左内胸動脈を使う通常のバイパス手術を内視鏡下で行う試みは多くなってはいるが、テスト段階である。その他に、78年前に日本人医師が考案した胃大網動脈を使う手術法がある。この手術法は、解剖学的に胃大網動脈が心臓に近接しているので、内視鏡手術が比較的容易である。手術所要時間は短く、入院も短期で済むので患者の体力負担も少ない。但し、重大な欠点がある。それは、将来胃ガンなどで胃を手術する場合に、先ずこの胃大網動脈を使ったバイパスを外す必要が生じる。心臓冠動脈手術のやり直しである。男性の77才は胃ガン適齢期でもあるから西村さんに今回お勧めしない。

 

2.     本格的な開胸バイパス手術

人工心肺装置を使う方式(pump)、使わない方式(off-pump)があるが、オフポンプ法が技術的難度は高いが、予後の経過で合併症が少なく、患者に有利であるとして主流になりつつある。U先生はオフポンプ手術しかやらない。ごく普通には左右の内胸動脈を使う。この動脈は、それ以前に使われた静脈グラフトと比べて、バイパスに使用した後で再狭窄や動脈硬化を起こしにくい(開存性という)点で優れている。

 

3.     カテーテル(+バルーン+ステント)U先生ではなく、E病院・G医師の説明)

狭窄が2ヵ所以上あって、そのうち1ヵ所は完全に閉塞しているケースではカテーテル治療は適さない。完全閉塞部分をドリルしてこじ開けるのは血管が破れるリスク、閉塞物の破片が他所へ飛んで障害を起こす合併症リスクがある。リスクを覚悟の上で、どうしてもこのチョイスを採用するなら、大学病院(例えば昭和大学病院)を選ぶべきかと考える。

 

結論としてU先生のお勧めはオーソドックスな開胸バイパス手術(off-pump方式)である。左右の内胸動脈を使うが、右側バイパスの長さ不足を延長するのに左橈骨動脈(左手から採取)を組み合わせて使用する。

 

                            (つづく)