中国の思惑

 

北朝鮮の政府の頂上に立つものは首相とも大統領とも呼ばず、英語ではSupreme Leaderと訳している。最高指導者を呼べばよいのかも知れないが、日本ではなんと言っているのだろうか。現在のそのSupreme Leaderがキムジョンウンである。かれは現在29歳で、政治の経験やまた軍隊での経験も全くないまま、現在の地位についた。

 

最近の北朝鮮の軍備に関する動向は、彼自身の考えなのかあるいはその背後で誰かが操っているのかについては、両論があるが、決定的な決め手がない。いずれにしても、国際社会、外交、また自国の経済についても全く知識がないままやっていることが明らかである。アメリカを先制攻撃するといっているが、それが結果的にどういうことになるか全く分っていない。

 

すぐにミサイルで韓国、日本、アメリカの基地を攻撃することはないだろうと考えられているが、恐ろしいのは何かの誘発か事故で突発的にミサイルの発射や地上攻撃が始まることである。遠距離のミサイル攻撃では、日本あるいはグアム島からの迎撃により空中でミサイルを破壊できるといわれている。しかし、陸上軍が韓国を攻撃してきた場合、ソウルが大きな損害と多数の死者を出すことは明らかであろう。

 

北朝鮮は世界から孤立していて、ただ一つの友好国は中国である。80%の食料と100%の石油は中国が供給している。したがって、北朝鮮と話し合って現在の危機を抑えられるのは中国のみであって、そのためにアメリカは中国への接近を頻繁におこなって、北朝鮮の抑制を図っている。

 

一方中国の思惑としては、明らかに中国は北朝鮮の発言と軍事行動に困惑していて、そんな北朝鮮とは手を切ってしまえという意見も政府内にある。

 

もし中国が北朝鮮の経済封鎖に踏み切ったら、北朝鮮の政府は崩壊することは間違いないが、そこで起こる混乱はひどいものになるだろう。しかし中国は北朝鮮を潰したくない大きな理由がほかにもある。

 

それは、北朝鮮政府が崩壊すれば、一時的な混乱はあっても朝鮮の南北統一に導くことに間違いないことで、ドイツ統一の結果と同じように韓国の経済力は非常に大きく発展するであろう。中国にとっては南北統一は何としても避けたい。このことは、北朝鮮の経済封鎖を主張する政府の高官の口をふさいでしまったことからも明らかである。これが中国の思惑の核心にあるということを理解すれば、中国の態度を理解しやすくなる。

 

もし陸上戦が始まったら韓国は大きな破壊を免れないであろうが、北朝鮮の兵隊の数は多くともその兵器は古いものが多く、また通信機能も劣っているという。長期戦になれば中国が軍事物資を供給しないかぎり、軍事力は急速に衰えるであろう。50年前の朝鮮戦争のときはソ連が後押しをしていたし、戦闘機の性能はソ連の方がアメリカよりも圧倒的に強かった。今回はそれが全くなく、中国が北朝鮮を全面的に後押ししてアメリカと闘うことは考えられない。

 

冷戦を背景に起こった朝鮮戦争とは全く事情が異なるのをキムジョンウンは理解できないのであろう。彼のことをアメリカではAdultchildと呼んでいる。それだけに、どんな無思慮な手を打ってくるかが予測できないのが不気味であり、なにが起こるかわからない。

 

中村省一郎