6 絵付けの技術

 

陶器を作る者にとって、色や模様をどのように仕上げるかは最も頭を悩ませる課題である。一番手軽に出来そうなのは筆で絵をかくことではあるが、デッサンの下地のない者にとっては、成功の望みは薄い。

 

幸い、他にも方法はいろいろあるもので、最近(1)判子で単純な図形を押し付ける、(2)黒白の写真をはりつける、(3)墨流し風の模様作り、などの技術を取得した。

 

(1)判子の作り方には様々な手法があるが、UV(紫外線)で固まる樹脂を使う方法がある。黒白のフィルムを用意し、その下にUV(紫外線)で固まる液体樹脂を入れた袋を敷き、UVを1分くらい照射すると、UVの当たった部分は固まり、当たらないところは液体のままなので、すぐに石鹸水で液体の部分を洗い流す。残るのが判子で、これを粘土の表面に押し付けると、模様が刻みこまれる。黒白のフィルムのフィルムは次のように作る。図案をスキャナーにかけてから、写真処理のソフトで黒白を反転し、レーザープリンターで幻灯フィルムに印刷すればよい。この道具一式は新品でも送料を入れて200ドルくらいで買えるが、実際にはeBayで買ったので100ドル程度ですんだ。安くかったので材料が古かったかどうかはわからないが、作業の手順はマニュアルどうりでは旨く行かず、自分なりの工夫が必要であった。しかし、研究者というのは言うなれば旨く行かぬものを成功させる職業であったから、苦にはならなかった。

(2)黒白の写真をはりつけるというのも、最初想像もしなかった技術である。その原理とは、HPとキャノンのレーザープリンターのトーナーには酸化鉄の粉が混じっている。そのようなプリンターでプリントしたイメイジを素焼きの表面に移し、それを本焼きすると黒い文字でも絵でも陶器に焼き付けることができる。酸化鉄は陶器に黒い色をつけるときに最も多く使われている釉薬の素材の一つである。ではプリンターで印刷した紙の文字や絵をどうして陶器の表面に移すか。それには、薄い皮膜を貼り付けた紙が開発されている。レーザープリンターで印刷すると、インクはこの皮膜に印刷される。そこで、必要な大きさに切り水につけると皮膜がはがれる。それを濡れたまま素焼きの表面で釉薬をかけた上に貼り付け、乾燥してから窯で本焼きにする。有機物のフィルムは焼けてなくなり、酸化鉄が陶器の表面に焼き付けられる。

(3)墨流し風の模様作りというのは筆者が勝手につけた表現で、本当はなんと言うのか分らないが、墨流し風の模様ができるのである。陶器に色をつけるには、粘土が濡れている間につける方法と、素焼きの上に釉薬をつける方法とがある。ここでは前者で、成型したばかりの粘土に少なくとも2種類の色のスリップ(色つきの粘土を水で薄めたもの)で単純な模様をつける。すぐに全体を持ち上げて、2度ほど水平に回転させると柔らかいスリップは遠心力で不規則に流れて、渦(Vortex)模様が幾つもできる。

 

(1)は写真1のような絵で成功しているが、(2)は薄い皮膜を貼り付けた紙は購入したものの、手持ちのプリンターがHPでもキャノンでもないので、HPの発注はしたものの少し待たねばならない。(3)はスリップの粘性によって流れ方がひどく異なり、また色の組み合わせにより、さまざまに予期しない模様となる(写真2)。どれも面白い技術なので紹介した。

 

写真1

 

写真2