ハミングバード

 

ハミングバードは日本語ではハチドリというが、アメリカ大陸にしかいない鳥である。

 

最も小さな鳥で、体の大きさは大人の子指の半分くらいしかない。種類により生息地が異なり、ロッキー山脈を含みその西側では多数の種類のハミングバードがいる。カナデイアンロッキーを旅行したとき、バンフの近くで非常に多数のハミングバードが群がっているのを見たし、さらに北のほうで一箇所、別の種類のハミングバードが多数群がっているのを見た。夏ならサンフランシスコの市内には、比較的地味な色のハミングバードが生垣の中を飛べまわっているのを見かける。

 

Photo: Ruby-throated hummingbird feeding Ruby-Throated Hummingbird

 

ロッキー山脈から東ではたったの一種類、Ruby-Throated Hummingbirdといって、雌はグリーン、雄は喉に赤く光る輪がある。我が家の庭にも時々やってくる。赤い花にしか来ないというのは嘘で、白、黄色やブルーの花にも差別なくやってくる。蜜を採ることが目的だから、赤い花にしか来ないような効率の悪いことはしないのである。

 

ハミングバード身体的データ

 

大人の体重 7g

脈拍 30~300/分

羽ばたき 200回/秒

体温 日中は40.5C,夜は10C

食料 花の蜜、虫

生まれたばかりの雛の体重 0.6g

 

ハミングバードは渡り鳥で、北アメリカで夏を過ごしたあと、南米に移動する。アメリカ東部及び中西部に生息するルーファスハミングバードは、夏の終わりにはフロリダに飛び、一気にメキシコ湾を飛び越えてメキシコに渡る。この飛行は17時間くらいかかり、体重の2gを消費するといわれている。

 

体の構造も、ほかの鳥とはかなり異なる。普通の鳥の羽は、人間なら腕に相当する部分があって、飛ばないときは折りたたんでいる。ハミングバードでは腕に相当するところが退化してなくなっており、手の平に相当するところが羽で、いきなり肩についている。足も足首がいきなり体から出ている。

 

上の表に身体的データをまとめたが、脈拍、羽ばたき回数、体温の数字は驚きである。羽ばたき200回/秒というのは音で聞くとピアノの中央のドの音から3音下がって、ドシラソのソの音がほぼ200Hz、バイオリンの一番下の弦の音でもある。

 

体温は人間よりはるかに高い。しかし夜は熱の逸散を防ぐため体温を10Cまで下げてしまう。(よく似た能力は他の鳥でも持っているのではないかと疑っている)

 

ハミングバードの空中での動きは非常に早く、また空中一点に体を静止させることが出来る。これは花の蜜を吸うときに欠かさない動作である。空中一点に体を静止させる努力は他の鳥でも試みることがあるが、非常に下手だ。

 

巣を作り、雛を育てるのは雌だけで行い、雄は関与しない。ハミングバードの巣は我が家のあたりにもあるはずだが見たことはない。

 

一度に二羽の雛が孵る

 

数日前に、PBS(Public Broadcasing Service)でハミングバードの特集があった。(旅行DVDデイスク59に収録)。それによれば、ある種のハミングバードは好んで鷲の巣の近くに巣を作るという。鷲は他の鳥を餌にするので危険な様であるが、ハミングバードは動きが機敏なので鷲にはつかまることがない。鷲の巣の近くには他の動物は近寄らないので、ハミングバードにとっては安全が守られる。

 

この番組では南米の珍しいハミングバードが数多く紹介しているし、また生態調査のためにハミングバードの足に輪をはめている光景がみられる。人間にとらえられ足輪をはめられている間、ハミングバードは諦めたような顔で目を開けたまま周りを見つめている光景が印象的であった。

 

体は極端に小さいながら、遠い国や町を旅行してくるハミングバードは、狭い地区から外へ出たこともない多くの鳥たちと比べると、その賢さと経験の深さにおいて格段の違いがあるといえるだろう。

 

中村省一郎  6-16-2013