蛸とイカ

 

アメリカでは魚を食べず匂いや味を極端に嫌う人が多い。始めてアメリカに来てカリフォルニアのバークレイに住んだとき、パーテイーに人を招いて、そのとき蛸の干物をつまみに出した。ところが、招かれた人たちは蛸の足の輪切りを不思議がり、「オー、自転車のタイヤの輪切りみたい」と評したものの、食べようとしなかったことが忘れられない。

 

最近になってアメリカの魚屋の店先も変って魚の種類も多くなり、時々蛸が並んでいることがある。それを買おうとすると、必ずのように近くにいる他の客に「それどうして食べまるの」と質問される。こんなとき、「まずは2時間くらい弱い火にかけて煮るのさ。そうすると柔らかくなるので、それからの味付けは、東洋風とか地中海風とか色々だ。」と答える。でないと大きな蛸は硬い。実は、2時間くらい煮るというのは、スペインの料理法の番組を見ていて数年前に学んだ知識である。日本には非常に柔らかく煮た蛸を売っているが、方法を知る機会がそのときまでなかった。

 

スペインでも北部海岸沿いの地域では蛸が豊富で、よく食べているようだ。そのすぐ北がフランスだが、フランスでどのくらい蛸が食べられているかは知らない。昨年行ったトルーズもそう遠くはないが、どこのレストランのメニューも蛸の料理にはほど遠かった。少し内陸たっだせいかもしれない。

 

フランスの地中海の沿岸を旅行すると、イカの料理が非常に多い。普通のイカ(squid)とコウイカ(cuttlefish)をいつも区別して、全く別の食べもものように扱っているの。これはロンドンのレストランでもそうだった。普通のイカはコウイカを含まず、コウイカはの普通のイカを含まない。両方を含む単語がないようだ。融通の利かない西洋風のsquid/cuttlefishと日本語のあいまいなイカという言葉との、どちらが合理的なのだろう。

 

最近のポルトガル旅行の番組で、イカの干したのを英語でドライドカラマリと呼んでいた。これはまさにスルメで、ポルトガルではスルメをたべるのである。イカを干してスルメを作る風景はどこも同じだが、背景の景色が異なるので面白い。アメリカ人の旅行者がスルメの足を味見していたが、妙な顔をしながらしゃぶっていた。

 

中村省一郎  3-25-2013