3月29日:雪の多かった今年の冬も、3月半から雪が雨に変わり、庭の雪は全部なくなった。水仙の葉が15cmも伸びており、チュウリップの葉もその半分くらいに大きい。蕗のつぼみは今年の最初の収穫物として料理して食べた。春の味である。

 

居間の窓から7~8メートルのところにあるごま塩桜の枝に小鳥の餌箱(ひまわりの種入り)がつるしてある。冬の間は、チッカデイ(四十雀)とカーデイナル(雄は真っ赤)しか来なかったのに、この一週間くらいは来る鳥の種類が非常に多くなった。寒い間は南へ行っていた鳥が帰ってきたためである。夏までには、ここへやってくる鳥の種類は15近くになる。それから2mくらい離れたところにはスエット(牛の脂身の塊)をいれた格子で出来た籠のような入れ物がつるしてある。これには、大小数種のキツツキが食べにくる。これにはカラスも非常に興味を持っているが、体が大きすぎて格子を足でつかめてもくちばしが届かず、あきらめて去ってゆく様子が明らかである。一度やってみてうまく行かない試みの失敗は、カラスも他の動物も良く覚えていて無駄な失敗を繰り返そうとはしない。

 

リスもひまわりの種に興味があり、繰り返しやってくる。ほっておけばリスにひまわりの種を全部食べられてしまうので許せない。だから餌箱を用意する難しさは、いかにリスに餌を取られないようにするかである。何年か前にも餌箱を作ったことがあったけれども、どうしてもリスには勝てなかったので、それ以来長い間中断していた。しかし、昨年の暮れ近くに、広告で見た新しい餌箱の設計にヒントをえて、安い餌箱に改良を加えて成功した。チッカデイとカーデイナルなど数種の鳥はこの地で冬越しするが、雪が降ると何日も地上で食べ物を探すことが出来ないのである。

 

餌箱は直径5cm高さ20cmくらいの透明のプラスチックの容器で、底には鳥の足が乗っかるように皿をつけ、また上部にはリスがそれ以下には来れない様に傘をつけた。底の皿は餌箱の中心を通るゴムひもに括りつけた。もしリスが地上から飛び上がって皿につかまったとしても、リスの体重でゴムが伸びて不安定になるので、リスは落ちるしかない。これはそれほど難しくなかったが、傘の工夫には何度もやり直しが必要であった。リスは木の枝を伝って登ってきて、餌箱をつるしてある針金をつたって傘の上まで来る。そこで針金を後足でつかみ体を逆さにし、前足を傘よりも下にたらして餌箱の上部に届けばリスの成功である。プラスチックの傘は手に入るものは直径35cmが限度である。次の日までにはリスはこれに成功して、こちらが気が付くとヒマワリの種を口いっぱいにほうばっているのである。

 

そこで、プラスチックのフィルムを大きく切って、それを傘の上に貼り付けることにした。垂れ下がったプラスチックが邪魔をして、リスの前足が餌箱の上部に届かないようにするためであった。このように、餌箱の様子が変わると、リスは下から眺めてかなり考える様子である。それから、よし!と決めたかのように挑戦を始める。最初の試みではプラスチックの大きさがたりなかったのか、やられてしまった。その次プラスチックの貼付けに用いた接着剤がうまく働かず、2~3日で剥がれてしまった。また、リスは怒ったのかのように、木にぶら下げてある針金を全部はずして、下へ落としてしまったこともあった。リスはあらゆる可能性を追求するのである。あれがだめなら、次はこれといった具合に。考える道筋は人間と変わらないのに驚かされる。接着剤の問題は、使うのをやめて傘の数箇所にドリルで穴を開け、フィルムを針金で傘の数箇所に縛り付けることで解決した。それ以来リスはあきらめたようで、木の枝にも登ってこない。

 

しかし数日前に変なことが一つ起こった。それは何者かがスエット入れの中身を全部つかみ出して、下に投げたのである。下に落ちたスエットをキツツキは食べない。すぐに新しいスエットを入れておいたら、次の日には同じことがおこっていた。鳥たちにはこのようなことは絶対に出来ない。スエットの入れ物まで来れる動物は他にいるとは考えられないし、リス以外には近くへ来たのを見たことはない。こんなことが起こったのも始めてである。どう考えてもリスが犯人としか思えない。ヒマワリの実が食べられなくなって人間をどのくらい恨んでいるのかは知る由もないが、恨みの腹いせにやったかのように思えるのである。

 

中村省一郎  3-20-2013