シリア情勢の急展開

 

8月21日にシリアのダマスカスの郊外約10箇所で化学兵器による民間人の被害が起こってから、アメリカはアサド政府に責任があるとして、アサドの軍事力を抑制するためにミサイルを撃ち込む用意を続けてきた。アメリカ大統領は議会の承認なしでもこれを行う権限を持っているが、オバマ大統領はロシアのセントピータースバーグで行われる世界20G首相会議に出席をひかえて、8月30日に声明を発表し、9月9日以降に再開する議会の承認を待ってから、攻撃の最終決定をすることを表明した。この段階で、西洋諸国の反応は、英国議会は英国はこの攻撃に参加しないことをきめたし、ドイツは一切コメントをさけ、フランスとトルコだけが賛意を示した。ロシアのプーチンは、アサド政府が化学兵器使用を使用したという証拠は何もないと主張し、国連の調査結果アサド政府が化学兵器を使用したことを確認しない限り、アメリカはミサイル攻撃してはならないと声明した。

 

世界20G首相会議中、オバマ大統領は世界20G首相に対してミサイル攻撃の正当性を訴えたが、多くの国の首相はこれを無視する態度で、オバマ大統領は孤立した状況に立たされた。

 

9月9日に議会の休暇が終わり、アメリカの上院下院議員はワシントンに戻ってくるが、それに先立ち行われた議員の投票予想では、上院下院ともミサイル攻撃に賛成は非常に少ない(上院では賛成が約25%、下院では7%弱)。そのため、オバマのミサイル攻撃案が議会で承認される可能性はないに等しい。また国民の意見の世論調査でも、攻撃反対が60%~70%である。アメリカの中では、議会が承認をしなかったら、オバマ大統領は独自に攻撃を行うかどうかの推測が飛び交った。

 

一方9月9日の朝、ロシアから「化学兵器を国連の管理に任せたらどうか」という提案がシリアに出され、シリアはその提案を受け入れる返事をした。アメリカの方では、その実現に懐疑的な見方も強いが、夕方になってオバマ大統領はCNNによるインタービウで、シリアの化学兵器の国連による管理が本当に実現するならミサイル攻撃の必要がなくなることを表明した。

 

アメリカもロシアもアサド政府を壊してはならないという考えの一致がある。それは、アサド政府が崩壊したらその後はイスラム経の過激派が政権をとる可能性は高く、多数のアラブ人の国と国境を接するロシアはそれをなんとしても食い止めたい。アメリカにとっても、イスラム経の過激派はアサドよりはるかに扱いにくいし、何よりもアサド政権崩壊が起これば化学兵器はイスラム過激派の手にわたることになる。また、ミサイルを撃ち込めば、アサド自信も指摘しているようにシリアを中心に中東の不安定が起こり、イスラエルをも巻き込む戦争になりかねない。

 

アメリカとロシアが協力するというのは非常に珍しいことである。シリアの危機がこれで治まるとは考えられないが、少なくとも化学兵器の問題は収まりがつきそうである。今日一日でシリアの情勢は大きな回転をしたようだ。

 

中村省一郎  9-9-2013