4  ロクロの壁

 

陶芸の成型は大きく分けて、ロクロを使う、スラブ、コイル、その他自由な成型であろう。さらに鋳型にはめる加工法がある。ロクロで作れるのは回転体の皿や花瓶、壷などの容器、スラブというのは一定の厚さの板をまず作りそれを切って張り合わせてゆく。スラブが二次元的な材料の使い方というならばコイルは一次元的である。つまり細い粘土の紐を作り、それを並べ合わせて望みの形を作る。自由な成型とは、粘土を自由にちぎって形を作り、それで仕上げてもよいし、つなぎ合わせてもよい。千の利休の使った湯飲みは、粘土の塊の中をくりぬき外を切り落として作られた。またこれらの方法をを組み合わせることも多い。たとえば急須を考えてみると、壷型の本体と蓋はロクロで、蛇口はスラブ、取っ手を引っ掛ける突起は自由な成型にたよらねばならない。コーヒカップのハンドルもそうである。

 

陶芸を学ぶというと全部をこなして行かなければならないが、なかでもロクロは非常に重要な分野で、それなしに陶芸をやり通すことは難しい。ところがロクロで大皿や背の高い花瓶、水差しなどを作れるようになるまでは、いくつかの難関を通過しなければならない。

 

陶芸教室に入るにあたって、これらの事情を多少知っていたので、自宅でも練習出来るようにすぐにロクロを自作し、また電気炉も中小二個手に入れた。陶芸教室に行ったときだけ練習すると、仮に週2回行ったとしても週に練習できるのはせいぜい3~4時間。しかし自宅では毎日数時間の練習が可能なので、私の進歩は他の人より数倍早かった。

 

それを認めた先生から、次の課題として高さ20cmの円柱を4本作ることだと言い渡された。云われてから2週間でその課題を達成したと思ったが、先生に見せると使った粘土が多すぎる、つまり肉厚すぎるというのである。

 

ロクロの上で回転する円柱の壁を薄くするには、両手の位置を固定し、壁の中と外から一点で圧縮して粘土を押して薄くする。手の位置を固定しているが、粘土は回転しているので、円形状に薄くなり、その分だけ円柱の背が高くなる。そして手の位置を徐々に高くしてゆくと、円柱全体に薄くなるはずである。

 

しかし左手は円柱の内部に入れ、右手は外に置き、それぞれ一本の指先で一点を内外から押すのは至難のわざである。おたがいに、相手の指がどこにあるのか分らないし、位置が狂ったまま力をかけると、全体が変形してもとには戻せなくなるか、全部が崩壊する。さらに悩んだのは、触っているところの壁の厚さが分らないことである。薄くなりすぎると、そこから全体の没落が始まり一巻の終わりとなる。この練習を始めて1週間くらいは毎日失敗ばかりで、ストレスがたまったので次の1週間はロクロを全く休んだ。再開後数日して、指同士がおなじ一点を壁の両側から押している時かすかではあるが独特の感触があることが分ってきた。

 

これをきっかけに工夫と練習を重ねた結果、高さ20cmの円柱4本という課題を達成することができた。次は上級に行くための課題で、そのなかには高さ30cmの円柱を基に作る作品や、直径30cmの鉢、大きなテイーポットなどがふくまれ、今のところ至難に近いが、それでも2ヶ月を目標としている。急ぎたいのは、この歳でそれに何年もかけていたのでは、作りたい作品を作る時間ががなくなる懸念からである。