ISISの石油密売とその影響

 

ISISは現在最も恐れられているテロリストのグループである。ISISの特徴はその資金が豊富であること、一日ほぼ$2M(200万ドル)の予算であると見られている。その資金はシリアとイラクで奪い取った油田からの石油を主にヨルダン、トルコおよびシリアに向けて石油タンカートラックで密輸して儲ける。製油施設はアメリカの爆撃で壊されても、小規模なものを23万ドル位の費用で10日もあれば作ってしまう。

 

ピーク時には一日に70,000バレルの生産をしたが、現在は爆撃による被害のために20,000バレルくらいに減っているといわれる。ISISによる密輸の石油価格は1バレルあたり$40程度であると云うから、市場価格の$80−$100にくらべてべらぼうに安く、近接の国で買い手はいくらでもある。

 

仮に一日に50,000バレル生産し$40/バレルで売ったとすれば一日の収入は$2M(200万ドル)になり、先に書いた数字と一致する。一月あたりで勘定すれば$60M。このくらいの石油の輸送は約200台の石油タンカートラックで行う。

 

ISISの最大の出費は人件費と兵器補給の経費である。ISISに雇われている兵士の数はほぼ25,000人で、給料は月$400といわれるので、月$10M。1月の収入が$60Mなら、人件費の$10Mが総収入に占める割合は大きくない。しかし給料が月$400というのはえらく安すぎるように思われ、本当はもっと高いかもしれない。

 

アメリカとその協力国はISISを空爆しているが、その最大の標的は石油施設と、グループで走る石油タンカートラックである。一時期200台あった石油タンカートラックは現在20台近くまで減ったともいわれているが正確なことはわからない。いずれにしても、ISISの石油密輸の量が減れば、ISISの勢いの減ることは間違いない。

 

ISISの勢いの増し方と関係があるのは石油の価格ではないかと思われる。原油の市場価格は1バレル100ドルくらいであったが、8月ころから値下がりをはじめ、10月になって1バレル80ドルを切る日がでてきた。メデイアの説明によるとその原因はアメリカでシェイルオイルの生産が高まったことと、サウジアラビアがイランとロシアを困らせるために石油産出量を大幅に増やしているからであるという。

 

しかしISISがそんなに安くで近隣の国に石油の密輸をすれば、すぐそばのサウジアラビアが黙ってみているわけには行かず、値段をさげて、ISISと競争に出ることも考えられる。

 

このような報道から分かることの一つは、中東での石油の生産はバレルあたり$40以下で出来るということである。一方、アメリカのシェイルオイルの生産は急ピッチで進んでおり、一国の生産量では世界一になったと伝えられている。しかしシェイルオイルのコストはバレルあたり$80に近く、原油価格が$80以下になると、採算がたたなくなる会社がでてきて、そのことがアメリカに不況をもたらす可能性が懸念されている。

 

ISISの安い石油密売が原油価格の安値の原因になっているのではないかという私の推測は、もしアメリカの空爆でISISの石油生産を止めるとこまで成功し、原油価格がもとに戻れば証明されることになる。

 

19−25−2014

中村省一郎