インデクスに戻る

 

オームの苦難

 

最近PBSのTV番組でオームの特集があった。何人かのオームの世話を専門にする篤志家たちの話が中心で、オームの逸話がいくつか出て来る。ここに出てくるオームは、体長が30cmから50cmくらいの大きな鳥たちで寿命は80年くらい。オームは南アメリカ、東南アジア、アフリカに生息する。アメリカでは15年くらい前から輸入禁止になっているが、以前に連れてきたオームの子孫がまだ多数いる。しかし、オームを飼っていた人がその難しさに懲りて、オームの専門家のところへ連れて来るので、そのような篤志家のところではオームの数は増える一方である。

 

オームは人まねがうまい。その理由は、オームは大きな頭脳を持ち、オーム同士で会話をし、仲間の交信の鳴き声を覚えることがオームにとって大事なことになっているため、オームの仲間が近くにいなくなっても、その能力で人間の言葉も覚えてしまうのである。しかしオームは常に仲間と一緒に暮らしている鳥であるために、人間に飼われて一人ボッチになると非常にさびしがる。その孤独がこうじると自虐的になって、自分の胸の毛を全部むしってしまう。オームが精神病にかかったためで、その治療は非常に難しく長期間かかるという。

 

オームを飼って精神病にさせないためには、飼い主はほとんど付き切りで、オームと話したり、運動や遊びの手伝いをしてやらなければならない。ある飼い主はどこへ行くのにもオームを籠に入れて車に乗せ連れてゆくのである。しかし、オームは80年くらい生きるので、自分のほうが早く死ぬかもしれないと心配している。

 

エピソード1:ある家庭で夫婦がオームを飼っていた。夫の方が主な世話をして、オームのほうも懐いていた。仕事の出張で1月留守になり、1月ぶりに再会したのだが、その再会でなにが気に入らなかったのか次の朝には胸の毛を全部むしりとってしまっていた。

 

エピソード2:親しい二つの家庭で両方が同じ種類のオームを飼っていた。一方の家庭が旅行に行くので、オームをもう一つの家庭に預けることにした。預かったほうは、二羽のオームを一つの籠にいれたところ、二羽は非常に親密になり強い絆を作ってしまった。旅行から帰った家族がオームを連れに来て、預かったほうの家のオームはまた一羽だけになってしまった。そのオームは寂しさに大声で泣き続けたのである。それを察した家族は、旅行した家族に事情を説明をし、オームを譲ってもらい、また二羽を一緒にしてやってオームの嘆きを解消した。

 

オームは犬や猫のごとく人間のなかに溶け込んで生きてゆく能力を持たない野生動物である。オームが人まねをするといっても、人間とオームが意を通じあうような会話は不可能である。仲間から離されて狭い籠の中に閉じ込められて飼われるときどんな気持ちかは人間には伝えられない。そのために精神病という悲劇がおこる。

 

二羽のオームが強い絆を作ると、体を寄せ合い頭を相手の首に押し付けたり、お互いに毛繕いをしあう。鳥ながら、人間が心を打たれる光景である。

 

中村省一郎 2-12-2014