通貨と金融に関する数個の観察

 

1.ユアンはリザーブ通貨になるか

 

アメリカの経済の将来が危ぶまれていてのは今に始まったことではないが、最近気になることが増えだした。その一つは連邦政府の赤字が急速に増えていって将来収集が付かなくなるときが近いのではないかという心配である。その時が来ると、大きな変動がおこり、社会不安が高まり暴動なども多発する可能性がある。

 

米国連邦政府の収支は毎年赤字で、米国の行うイラクやアフガニスタン戦争出費、レーマンブラザーショックで起こった銀行破たん救済など多額の出費はすべて外国からの借金とさらにドル札の印刷で行ってきた。貨幣の割り増しを印刷で行うことはドルだから出来るところに大きな問題を抱えている。これが出来るのはドルが世界のリザーブ通貨であるから出来ることで、ドイツのマルクや日本の円では許されない。

 

リザーブ通貨ということは、世界の貿易はすべてドルで決済されるということである。米国以外の国では、貿易を行うためには多額のドルの保有がなければならない。一方米国はドルを十分に印刷して、世界に供給しておかなければならない責任がある。ドルがリザーブ通貨になった1920年代以前は、世界を制覇していた英国がその役を果たしていた。しかし英国の経済の下落のためにその座を降りて米国にゆずったのであった。

 

米国に多額の貸し出しをしているのは中国で、これは中国の輸出の売上金はすべて中国政府の手を通して入ってくるので、中国政府は一定の額を差し引いてから業者にわたす。したがって、輸出の多い中国では政府は世界一で莫大な国家予算の黒字をもっている。その金を米国に貸してきたのである。しかし中国としてはいつまでもこんなことをしていたら、米国の勝手をゆるし、米国の負債は増えるばかりで、自分たちは儲けた金を中国を潤すのに使えないから、何とかしなければならないと考えるのは当然である。特に、米国が貨幣の印刷によりドルの価値を薄め始めたのでは、貸しておいた金の価値は下落してゆくばかりである。

 

そこで中国が狙うのはユアンをリザーブ通貨にするように仕向けることである。それには2つの課題があって、一つはユアンを強い通貨にすること、二つ目は中国の金の保有量をふやすことである。中国は過去にはユアンの変動をほとんど許さず安くに抑えてきた。しかしユアンを強くするためには変動性を許し、ユアンを高くする必要がある。そのために第一歩として、今年の3月末に中国は制限つきではあるが変動を許すことを発表した。(余波ではあるがその日から金の値段が変動し始めた。)金に関しては、中国政府はいくつかの政策を実行している。過去10数年にわたって中国は毎年金を買いためて保有量を増やしてきた。以前は中国人は個人による金の保有を許さなかったが、数年前から個人に金を奨励して貯めさせている。中国の金の産出は世界一であるにもかかわらず、中国は政府が全部買い上げ、輸出を認めない。このような中国の金政策が金の値段を吊り上げている。去る2月にニューヨークのマンハッタンにある大きなビルが中国政府に買い取られた。その地下には金を保管する大きな金庫があるというのも一連の出来事として無視できない。

 

ドルがリザーブ通貨である事を嫌っているのは中国だけではない。世界中の国が、米国の勝手な赤字政策を嫌っている。このために、ドルなして貿易をする方法がとられるようになってきた。それは交易をする国同士で、ドルなしに決済する協定をむすぶことである。日本もいくつかの国とでその協定を結んだ。

 

さて、ドルがリザーブ通貨でなくなるか、そこまでは行かなくても、世界の国がリザーブ貨幣のドルを無視し始めたらどうなるか。米国の特権であった連邦政府の赤字をドルの印刷で賄うことができなくなる。その結果は、大幅な税率の値上げになるであろう。銀行預金の一部没収もあるかもしれない。社会の革命的な変化がある事には違いないであろう。ドルがリザーブ通貨でなくなれば、世界中にタブ付いたドルで、ドルの価値は急激に低下し、米国はものすごいインフレになるだろう。米国の金持ちはすでにこのことを予想して、資産を安全なところに移したり、金を買い込み、また外国の通貨に換金しているとも伝えられている。

 

一方、連邦政府は米国人の国外銀行預金を非常に厳しく取り締まりだした。国内の大幅な増税があれば、金を持っている人は国外に持ち出すことを考えるであろう。歴史的にも、スイスの銀行は秘密を硬く守るので、そのための隠れ蓑として都合がよいところと考えられてきた。しかし。米国政府はスイスの銀行にも強い圧力をかけ、米国人の預金者の名前を公表することを要請し始めたのである。

 

中村省一郎  4-11-2014