大動脈弁閉鎖不全手術

武山高之

 

9月に入ったら、千葉大病院心臓血管外科で大動脈弁閉鎖不全治療のための弁置換手術を受けることにしました。詳細日程は未定です。

入院期間は、順調ならば10日ほどです。あと1か月程度はリハビリに努めたいと思います。

しばらく諸活動を停止しますので、よろしく。

以下、経過を纏めました。ご参考に。

 

大動脈弁閉鎖不全が指摘されたのは6年前。原因は加齢。

6年前に千葉の自宅近所の主治医、大久保先生(土佐高校の後輩で循環器内科専門)に、

「聴診器にザーザーという雑音が聞こえるうえに、血圧の上値と下限の開きが大きくなっています。これは大動脈弁閉鎖不全になっている可能性がるので、千葉大病院循環器内科小林先生(現在は教授)を紹介するので、心エコーの精密検査を受けて下さい。階段を上る時に息切れはしませんか」

と言われて、千葉大病院で受診することにしました。結果は大久保先生の予言通りでした。

小林先生は「手術しましか」と簡単に言われましたが、「もう少し様子を見て下さい」と答えました。

それから、はじめは半年に1度、そのうちに1年に一度、心エコー検査をしましたが、「少しずつ悪化しているが、大きな変化はない」との診断が続きました。

3年ほど前に、小林先生から藤本先生に担当が代わりました。最初の診断の時に、「手術します」とまた聞かれました。どうも、初めて検査結果をみると、〈手術適応〉と判断されるようでした。

藤本先生に、今までの小林先生とのやり取りを話すと、

「では、もう少し様子を見ましょう。しかし、あまり歳をとると手術が出来なくなります」

との話でした。

80歳くらいまでには、決断しましょうか」

と返事しました。

 

                                                                   

大動脈弁閉鎖不全、心肥大、僧房弁閉鎖不全へと徐々に進行

 この間、心臓がどのように変化したかと言いますと、まず心臓から大動脈に血液を送り出す大動脈弁あたりの逆流が少しずつ増えてきています。

(*カラー・ドプラーを使った超音波検査、いわゆる、心エコー検査で分かります。)

つまり、本来、大動脈弁のところでは、血液が心臓から大動脈に押し出されるべきところが一部心臓に逆戻りしているとの診断です。心臓機能の効率が落ちているのです。心臓の効率が落ちると、それを補おうとして、心臓の負荷が大きくなり、次第に心臓が肥大してくるというメカニズムです。

 今年の春頃からは、僧房弁の逆流も少し見られるとの診断でした。

 

まだ、危険な症状は出ていないが、今後も進行は続くと予想。より高齢になると手術は難しい。今は決断の時では。

 そして、私は今月80歳になります。そろそろ手術をする頃合いと思い、循環器内科の藤本先生と相談し、8月頃に検査入院をお願いしておきました。

そして、730日〜81日の検査入院を行いました。担当は正司先生と西先生でした。検査の目的は、閉鎖不全の状態を詳しく知るための「大動脈造影検査」と心臓手術の際に冠動脈に問題はないかという「冠動脈造影検査(CAG)」でした。

 今まで行ってきた「心エコー」検査はカラー・ドプラー法という超音波検査なので、体に負担はありませんが、入院検査はカテーテルを体の奥深くまで挿入するので、負担の大きい検査でした。

「冠動脈造影法」は右手首の動脈からカテーテルを6~70センチ、心臓の冠動脈まで挿入し、X線に映る造影剤を流入し、冠動脈の詰まりを観るもので、とくに問題はありませんでした。

「大動脈造影検査」は頸静脈からカテーテルを挿入し、造影剤を流し、大動脈弁の逆流を調べましたが、心エコーで得られた情報とほぼ同じでした。

 

 高齢で手術が必要になると、手術をするかしないかの選択はいつも問題になります。

以前、医薬医療事業でお世話になった三代目基礎研所長の加藤嵩一さんに、我々同世代3人との食事会のときに

「最近、胃癌だと言われた。どうしようかと思っているが、君たちは手術をした方がいいか、しないで放って置く方がいいのか。どう思う」と聞かれたことがあります。

「加藤さんは医薬医療のリーダーですよね。ご自分が一番ご存じでしょう。やはり、手術にチャレンジされた方がいいのではないですか」

というのが、一同の意見でした。加藤さん83歳の頃のことです。手術は成功しましたが、それで長生きされたのか否かは誰も分かりませんでした。

私もそんな選択をする歳になりました。

  

心臓の構造

ここで、心臓の構造について、簡単に説明します。心臓が4つの部屋に分かれていることはご存じでしょうが、今問題になっているのは、左心室です。

大動脈弁は、左心室から大動脈へ血液が流れ出すところにあります。

僧房弁は、左心室の上にある左心房から左心室に流れ込むところに有ります。

いま問題になっている弁は、いずれも左心室に付いています。

 

手術の概要

 手術の概要を述べますと、まず心臓を開く「開心術」を行います。そのためには、心臓の拍動を止める必要があります。心臓の拍動をとめるには、「心筋に薬剤を投与」する必要があります。

心臓が止められている間は、「人工心肺装置」で血液を全身に流します。もちろん、「全身麻酔」です。

大動脈弁は人工弁に置換します。人工弁は生体弁と機械弁がありますが、高齢者は通常生体弁が使われます。機械弁は術後、抗凝血剤としてワーファリン続けて使う必要があるようですが、管理が面倒なようです。生体弁の場合は作用の弱いバイアスピリンでよいと聞きます。術後の管理は楽なようです。

今回使うのは、ウシからとった生体弁で、グルタールアルデヒドで処理し、強度をあげ、免疫拒否反応を抑えたものです。6年前に大久保先生に相談すると、「武山さんは幾つまで生きたいですか?」

と聞かれました。

「平均余命の86歳までは生きたいですね。出来たら90歳まで生きれば十分です」

と答えました。

「高齢者の場合使うのは、普通は生体弁です。生体弁の寿命は10年くらいですので、80歳になったら弁置換手術を頼みましょう」ということになりました。

最近、生体弁寿命は改良されは15年以上と言われています。80歳の私には十分です。

僧房弁は弁置換ではなく、弁を残したまま、開き具合をコントロールする「弁」を使います。

 いずれも、いずれも半世紀以上前に最初の症例が報告されていますが、最初はかなり危険な手術だったと聞いていますが、最近はかなり確立し、普及した手術法になっており、成功率は98%位と言われています。

私の親しい友人でも2人手術を受けて元気にしています。一人は千葉大で手術を受けています。

主治医の大久保先生のところからも、千葉大に何人も送り込んで成功しているそうです。皆さん、元よりも元気になっているそうです。

手術時間は数時間要するでしょう。頑張ります。

 

千葉大病院の体制

実際の手術は10人以上のグループ体制でなされています。

まず、外科の執刀医。腕が大切です。千葉大病院の評判はいいと聞いています。大久保先生もお勧めです。教授は、阪大出身の松宮先生で、大久保先生が最近、学術会合でお会いしたので、お願して頂いたとのことでした。

 ほかに、麻酔医、人工心肺装置などを操作する技師、看護師など整った総合病院なので、充分だと思います。

 手術に当っては、トラブルを最小化する為でしょうが、一般的検査項目はすべて、さらに上半身のCT、頭部のMRIなどたくさんの検査をしました。

また、術後の細菌感染による敗血症ショックを防ぐため、歯科・口腔外科の検査までしました。

 

関係した医師たちの意見

 今回の手術に当って、近所の主治医の大久保先生、千葉大循環器内科外来の小林先生、引きついた藤本先生、検査入院担当の正司先生、心エコー検査に立ち会っていた若い女医さん、みなさん大体同じ意見でしたので、極めて標準的な診断結果だと思います。

 

医療技術と体制の進歩

 私は、40年以上前から医療材開発をライフワークにしてきました。しかし、自分の体で本格的な手術を受けるのは初めてです。先生方と話していると、この40年間に医療技術と体制が大きな進歩をしてきたことを、身をもって感じます。その一部には私たちの貢献もあるのでしょう。