洛禎OB会の報告(その3) 伊藤一男  5−30−2015 

 

山極学長のこころ

 

若者たちの挑戦(鶴田先生はH24.11.16毎日新聞の記事を配布・解説された。以下はその概要)

 

今年卒業した田中英祐君(物質エネルギー講座所属、京大工化会の一員)がロッテからドラフト2位の指名を受け、プロへの道を歩み始めた。最速149キロの速球投手で、関西リーグで勝利をもたらし、京大の60連敗を止めた。挨拶にやって来てくれた田中君に、私(山極学長)は「失敗を恐れず、文武両道を貫いて欲しい」と激励した。いくら才能があるとはいえ、高校のときからプロを目指して野球の英才教育を受けてきたわけではない。学問にも未練があるだろうし、本人もずいぶん迷ったことであろう。

 でも私は、まだ京大生が選んだことのない道に挑戦しようとする田中君の決断を大いに歓迎したい。自分の将来はそんなに簡単に予測できるものではない。自分にどんな能力が眠っているか、自分のどんな経験が生かせるか、やってみなければわからない。重要なことは、失敗をよき経験として新しい可能性に絶えず挑戦することである。(略)しかし、期待通りに能力が開花して成功するとは限らない。途中で挫折することも運に見放されることもしばしばある。残念なことに、昨今の日本の社会は失敗を認めない風潮がある。周囲の過剰な期待が個人を追いつめ、夢を打ち砕くことがしばしばある。

 学問の都である京都大学でスポーツに秀でたプロ選手が育つのは、とてもうれしいことだ。自由の学風を伝統とするこのキャンパスで磨いた知性や能力をぜひスポーツに生かしてほしい。田中君の挑戦をみんなが期待して見守っている。しかし、その期待をむやみに拡大して田中君の将来の可能性を摘んではいけないと思う。彼にはきっと、野球以外の世界で活躍する才能もあるに違いないからだ。個人に一つの能力だけを期待し、それを果たせない人々を見捨てようとする社会は生きづらいし、創造の精神は発揮できない。(その3、完)