追悼・鶴田禎二先生

武山高之(2015.9.26記)

 

私たちを「ドイツ化学史の旅」にいざなって頂いたのは、山岡望先生の名著『化学史談』でした。

また、私たちの「ドイツ化学史の旅」を化学史学会で発表することを勧めて下さり、会長の古川安先生を紹介して頂いたのは、鶴田禎二先生でした。

その鶴田先生が旧制六高での山岡先生の思い出を書いた一文が見付かったので、そのさわりの箇所を抜粋して紹介します。

 

 山岡先生の想いは鶴田先生に伝わっていました。そして、私も同じ思いを共有しています。

鶴田先生のご冥福を祈ります。

 

化学史研究 22 〔1〕50−52(1995)

〔雑報〕

旧制高校教師 山岡望先生について

  鶴田禎二

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3.山岡先生と化学史

 先生の講義では、出来上がった化学よりも、化学ができ上がるまでの人間の苦悩と喜びが語られていた。いつの場合も、人間愛に満ちた語りぐちで化学者の群像が生き生きと描かれていた。なかでも、ベンゼンの六角構造25年を祝うベンゼン祭(1890年)におけるAugust Kekureの講演のうち、“Lernen wir träumen,meine Herren,dann finden wir vielleeicht die Wahrheit.”「諸君、夢を見るべし、あるいは真理を見出すことも出来るでしょう」に始まる一節は山岡講義のハイライトであった。(中略)

 先生が戦後(19511970)心血を注いだ著作『化学史談』全9巻の内容も人物中心の化学史物語となっており、ひとたびこの本を手に取ると、ついつい引き込まれてしまうほど面白い。授業の時、『史談』の中の話をさしはさむと、学生たちの眠気は霧散し、授業の能率の上がることは必定である。……