最近の私の音楽活動 (1)

 

学生のころから音楽は好きな趣味ではあったが、ピアノをまともに練習し始めたのは、45歳ころだった。というのも、卒業した後はピアノのある環境ではなかったし、化学からは遠い新しい専門の勉強で忙しく、音楽に時間を費やす余裕はなかった。アメリカに来てピアノの購入はしたけれども、子供のためであって、自分で音楽に時間とエネルギーを用いる暇のないことは変わらなかった。

 

大学勤めを始めてから8年たって教授の地位に昇格し、身分も経済的にも安定した状態になったとき、ながく暖めていた望み、つまりコンサートピアニストからピアノのレッスンを受けることことを実現しようと思った。幸い勤める大学には音楽学校があって、そこの教授がレッスンをしてくれることになった。初歩から始めて約10年間、少しずつではあったが進歩を続けた。技術を習ったこともよかったが、音楽ではどのように表現したらよいかを学んでのはおおきな収穫であった。

 

しかし、東京のあるスーパーコンピューターセンターで、事故を起こし指を大怪我したのである。手術で形はなんとか2年間で元へ戻ったが、痺れがなくならず約20年間ピアノを弾くことは出来なかった。驚いたことに約3年前ころから、その指が元へ戻って使えるようになったのである。約20年練習していなかったので、まえに練習した曲を弾けるようになるには努力が必要であったが、その努力を続けた。夜中に目が覚めることが多いので、そのとき静かな音でも練習できるように、電子ピアノも購入した。

 

話は変わるが、4年前からコロンバスのCAC(Cultural Art Center)で陶芸の練習を行っている。そこには大きなホールがあって、種々の芸術作品の展示会場をして用いているが、そこにグランドピアノが置いてある。しかし手入れをする人がおらず、調律も必要であった。私はピアノの調律ができる。そこで一年ほど前にCACの所長と話し合って、私が必要と判断したときには、いつでも調律を行い、また練習に用いてよいという合意を得たのである。というわけで、陶芸に行って時間の余ったときや、週末など、時々そこで練習するようになった。

 

その練習を聞いた居たCACのプログラムデイレクターが、セミナーの時間に独奏リサイタルをやってほしいと言い出したのである。このとんでもない提案に私は躊躇した。ピアノの専門家ではないし、何年も練習できなかった不幸な歴史とまた超高齢に達していることもその理由であった。しかし、これまでにも私の演奏に心を打たれてた言ってくれた人が何人もいたし、プログラムデイレクターが再度、ぜひやってほしいといってくれるので、これからも十分練習の出来る時間をとって、7月28日に別記のプログラムで演奏をおこなうことに同意した。

 

今から2月ほどあるので、全曲を暗記できるだろうと思う。と言うよりは、いったん引き受けたからには、高齢だから暗記が出来ないなどと甘えたことを言っては居られないのである。