伊藤壽子さんを偲んで

武山文子

 

楽しい旅の仲間、チャーミングな壽子さんの笑顔が、もう見られなくなり、とても淋しく思います。

ドレスデンのオペラハウス前での記念写真。やさしいご主人により添ったチャイナドレス姿は素敵です。

何回か、ご一緒した旅でも好奇心いっぱいで、健脚でした。女性の好きな旅の買い物案内役は、ドイツ駐在経験のある西村成子さんにお任せでした。デパートではミセスに合うセンスのいい服選びをしてもらって、壽子さんも私も、ぴったりサイズでお気に入りが選べました。その時のニコニコ顔が忘れられません。

 レストランではかわいい口元を小さくして「お肉」と注文される。食べっぷりもよく、スリムな体は太ることを気にしなくてもいいから、私は羨ましかったです。

 伊藤ご夫妻と武山夫婦は、化学史の旅の行程を最初から最後までご一緒することが多かったので、思い出がいっぱいです。コペンハーゲンの宿のすぐ前が湖で、朝の散歩の時、白鳥の卵を見つけたことや、人魚姫の像を探しまわって苦労したことなど。ロイヤル・コペンハーゲンのショップで何か一つ思い出の品を買いましょうと、二人でおそろいの白いピッチャーを選びました。

 病気になられ、闘病生活に入られてから、ご主人は毎日病院に通われました。少しでも元気づけられたらと、私は庭に咲く季節の花を絵手紙に描いて送り、ご主人に届けて頂きました。亡くなる前日、白いピッチャーを描いた絵手紙を見て、かすかに頷かれたそうです。瞼に留めて、旅立たれました。

 ドイツ留学しているお孫さんのピアノの生演奏を現地で聴けなかったのが心残りでしょう。きっと、あの力強いチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を、雲の上にちょこんと座って聴いていらっしゃることでしょう。

 ご冥福を心からお祈りしています。