解説 北朝鮮水素爆弾:基礎知識と対策

 

 

北朝鮮が去る9月2日に水素原爆のテストに成功したと発表した。下の図は過去の北朝鮮原爆テストの爆破力比較である。以下原爆と水素原爆について概略を説明する。

 

 

 

原子爆弾の構造と機能

 

よく知られているように、原子爆弾は純粋に近いウラニウム235(広島)かプルトニウム239(長崎)を使う。U235もPu239も、それそれの臨界量以上の塊にすれば自然に原子核分裂連連鎖反応が起こり、大爆発をおこす。一番少量で爆発を起こさせるには、球形が最適である。なぜなら、球形は表面積の体積に対する比が最も小さく中性子の漏れが最小になるからである。

 

原子爆弾を作成するためには、遠心分離による濃縮技術が不可欠である。

 

プルトニウム239を用いる場合は、直径約10cmで爆発をおこす。しかし、意図しないときの爆発を起こしてはならないので、球形を2個、あるいは3個に分けて作成し、爆発の寸前に合体するような装置を爆弾のなかに装備する。

 

水素爆弾

 

水素爆弾では、原子爆弾中心部に圧縮重水素を置く。原子爆弾が起爆して中心を超高温超高圧にすると、水素が核融合反応が起こり、原子爆弾の何十倍もの爆破力を発揮する。太陽の熱は核融合反応によるもので、太陽の温度は約6000度Cである。つまり、水素爆弾では太陽の中で起こっている核融合反応を爆弾に利用しているといえる。

 

下図に水素核融合反応反応の過程を示す。

 

 

水素爆弾ではU235あるいはPu239の臨界量がはるかに増すので、ICBMの弾頭につけるには、重量を最小にすることが困難な仕事になる。

 

北朝鮮で爆発させた水素爆弾でU235を用いてかPu239を用いたかは今のところ不明である。今後の隣国での観測で検出される可能性はある。核爆発で消費されるU235あるいはPu239はごく微量で、残りは粉になって飛び散る。地下爆発でも残ったU235あるいはPu239が空中に逃げ出す可能性は高い。この場合散飛したPu239はU235よりもはるかに危険である。

 

もし原子爆弾あるいは水素爆弾が日本向けに発射されたらどうするか

 

さて、原子爆弾あるいは水素爆弾が空で爆発する場合、非常に大きな閃光が発生し、その光線に当たると、地上の生き物は高熱のため即死する。その可能性がある時の最大の防御法は、なるべく大きな鉄筋の建物の奥へ行くか、地下に潜ることである。

 

北朝鮮から日本へ原子爆弾あるいは水素爆弾をロケットで発射すると日本上空で爆発するまで7分かかるといわれる。もし日本政府がその発射を検知して警報を鳴らしたとしても、それまでに4分は過ぎており、逃げる時間は3分しか残されていない。その3分のあいだに鉄筋の建物地下をみつけて、そこへ逃げ込まないとならない計算になる。

 

原子爆弾あるいは水素爆弾による放射能の害も無視できないが、放射能が地上に降りてくるには時間がかかる。もし、原子爆弾あるいは水素爆弾の閃光から生き延びたら、次にやるべきことは被災場所から風上のなるべく遠くへ避難を考えなければ、放射能の害で死にさらされることになる。

 

平素から、自分の住んでいる地域で風上とはどの方向が多いかを、天気図で確かめておくことを勧めたい。しかし、風向きはその時の天気やまた地形によっても変化するので、雲の動きや、旗のなびく方向で判断することも重要になるだろう。

 

原子爆弾あるいは水素爆弾が上空で破裂した場合、もう一つ知っておくべきことは、直後に雨が降りだす可能性が大きい。その理由は爆発で加熱された空気がその周りの空気も巻き込んで上昇し、上空で冷却が起こると、水分の凝縮で雨になる。この雨には大量の放射能を含んでいる可能性があるから、この雨で濡れないようにしなければならない。この放射能の害は、爆発からかなり離れた地域でも起こることがあることに注意が必要である。

 

この放射能の種類は、原子炉事故のときの放出された放射能と本質的には同じもの(核分裂生成物)と、U235あるいはPu239の粉塵の2種類ある。しかし核分裂生成物の成分は時間と共に変化し、原子炉事故での放射能とは成分がかなり異なる。にもかかわらず、原子炉事故で得た知識と経験は役にたつだろう。被災地から離れた場所でもガイガーカウンターが再び役に立つかもしれない。

 

中村省一郎