アニス酒とアブサン (12-9-2002)

 

アニス酒のことは最近武山さんに聞くまで知らなかったが、このことは私の興味をくすぐるに十分であった。早速酒屋で探してみたら、ギリシャ産のよく似た酒でウーゾというのがみつかった。アニスというのは、前にも書いたようにせり科に属するアニスという植物で、アニス酒は種をブランデー位の強いアルコールに漬けて成分を抽出させて味をつけたものである。

アニス酒は、トルコ、フランス、ギリシャ、イタリー、スペインで人気があり次の名前でよばれている。

トルコ:ラク(Raki)

フランス:アニセ、パスティ(Anisette, Pastis)

ギリシャ:ウーゾ(Ouzo

イタリー:サンブーカ、アネソネ(sambuca, Anesone)

スペイン:オジェン(Ojen)

それぞれアニスの味と甘さに強弱があるようだ。アニス以外にリコリス、フィネル、キュウミンを混ぜる場合もある。ほとんどは、蒸留酒にアニスを主とする香辛料を浸して味を付けるが、パスティのように、味を浸してから蒸留するものもある。

アニス酒の味の説明が面白い。最初は、12歳のころはじめて飲んだビールのような妙な味だが、二回目はリコリスの味に思え、三度飲んだら病みつきになるという。

アニス酒はアブサンとかなり近い関係にある。その理由の一つは、どちらも芳香性の非常に強い酒で、水を加えると白く濁る、また生産者が両方作るところが多い。アニス酒を調べていたら、アブサンの情報も同時に多く出てきた。そんなわけで、アブサンのことも少し書こう。

アブサンはもともとフランスのリキュールで、フランス革命後庶民の間に普及し始めた。19世紀の後半までには爆発的に生産量が上昇し、当然周りのラテン国にも普及した。19世紀後半、アルジェリアに多量の軍隊を送りこんだフランス軍は、兵士のインフルエンザの薬としてアブサンを飲ませたという話もある。

20世紀の初め米国にもルイジアーナのフランス人移民を通じて輸入されるようになった。しかし第一次大戦の直前米国では輸入禁止になったのである。他の国でもアブサン輸入禁止をおこなったが、フランスは長い期間他国の禁止に抵抗し発売禁止をしなかったが、禁止後も調髪剤の瓶に入れて闇販売されていたという。スペインでは、一度も禁止にならなかった。その代わりアブサンの瓶には、アブサンには害があるが、飲みたければ自分の責任で飲めと書いてあるそうだ。

私がアブサンをおぼえたのは、大学を卒業して2年目くらいのとき、国分寺か三鷹のあたりのバーだったように思うが、禁止ではなかったことになる。

なぜ禁止になったかといえば、アブサンの原料はニガヨモギとよばれる植物の葉で、その成分は神経を冒すのである。

このアブサンを好んで飲んで大きな影響を受けたのは、19世紀のフランスのデカタン派と呼ばれた画家たちであった。ピカソやゴッホの作品には、アブサンを飲んでいる紳士や淑女の油絵が何枚かある。ゴッホが気が狂って自分の耳を切り取ったのは有名だが、実はアブサン中毒が原因であったという。

ところで、数年前にECでアブサンを正式に許可して、アブサン販売が開始されたそうだ。ただし、ニガヨモギの成分の量を中毒にならぬように厳密に制限してあるという。アイソマー諸氏、アブサンも味見してみてはどうですか。あれも不思議な味の酒ですぞ。

中村