パン焼きの不思議は解決しました

 

男子厨房に入らず、などという言葉があるが、現代の生活では一人で家を離れて暮らさねばならぬこともあるし、とてもそんなことは言っていられない。 私がパンの作りかたに興味を持ったきっかけというのは、最初はぶどう酒つくりを試みたが、とても素人の出る幕ではないことに気がついたときには、でっかいイーストの塊がのこっていた。ぶどう酒用のイーストはパンにも応用できるので、パン作りの試みをはじめた。しかし、ピッッアの台まではうまくいったものの、本格的な食パンやその他の良質のパンはとても出来なかった。どの本にかいてある通りやっても成功はしないのである。その後何年もの歳月がすぎたが、小麦粉と水とイーストで作るパンがなぜ難しいかという疑問だけは忘れたことがなかった。

 

米国人の主食はパンであるのに、我々に気に入るパンがなかなか見つからない。もちろん、フランス式バゲット、ドイツ式のハンターズブロットやフォルクスブロト、あるいはサンフランシスコ流のサワーブレッドも手に入るようになり、そのようなパンを買い求め続けたこともあった。

 

しかしどうしても満足がゆかず、数年前から、パンつくりの試みを再開することになった。何回か失敗することは承知で、まずは、どのパラメターがどのように影響するかをしらべた。まず出発点の条件をきめ、出来たパンの味見をする。二回目は、パラメターをひとつだけ変化させて、結果をみる(試みは一週に一度)。三回目には、またパラメターをひとつだけ変化させる。このようにして、何回か失敗には終わったけれども、どのパラメターがどのように結果に影響するかが掴めてきた。

 

基本的なパンは、小麦粉、水、イースト、さらに少量の砂糖、塩、バターが材料である。だからパラメターは、小麦粉の種類、格材料の小麦粉に対する重量比、さらにこねる回数と焼く温度と時間が加わる。これらのパラメターの中でも、水の重量比とこねる回数以外は比較的狭い数値の範囲にあることがわかり、あまり疑問をのこさない。小麦粉の種類は、最強力粉に普通の粉を3分の1加える。最強力粉だけでは、グルテンが多すぎるからである。私の到達した水の量とは、体積比で4分の1、重量比で30% 重量比で55%。こねるのはパン焼き機を用いて正味4分、パン焼き機に付いてきたパンフレットの4分の1に近い。これでやると、家族がみな満足し、来客もほめて呉れるので間違いないとおもう。

 

ここまでは2年以上前から分かっていた。焼くときは、武山さんの奥さんに教えてもらって、河童町で買ったプルマン式のパンを焼く容器である。

 

しかし、私のみつけたパラメターの組み合わせは、パンつくりの教科書には書いてない数値であることをかんがえると、パラメターの多次元空間を想像しないわけにはゆかない。つまり、多次元パラメター空間のなかに、パンつくりに使える領域があり、私はその中の一点を見つけたのであろう。ほかの人や店は、その領域のどこかで、私のとは異なる点でパンを作っているに違いないのである。

 

そんな思いから、本棚にあった日本語のパンつくりの本を開いてみた。驚いたことに、水は重量比で64%とある。別の日本語の本にも64%とある。信じられないので、インターネットで調べたら、やはり近い数字がでてきた。どうなるか、とにかくやって見ることにしたが、案の定べとべとになりすぎて、こねてもこねても様にならず、生地が発酵するままに焼いてはみたが、まずい。

 

うかつな計算か読み違いをしているのではないかと、何回も読み直し計算のし直しもしたが、間違いない。どなたかの家庭で、パンを作られる方があれば、ぜひご意見を賜りたい。

 

ついでながら、英語のパン焼きの教科書では、水の量は体積比で3分の1、重量比で40%が一般的で、これならこねる量は増えるがかなり近いものが出来て、納得がゆく。日本語のパンつくりの本には、生地をこねるとき500回たたきつけるようにやれとか、体力を消耗するような方法が書いてある。英語のパン焼きの教科書では、こねは滑らかになるまでの数分でよいと書いてある。そういえば、日本でパンを食べると、水分が多くてネチャとしたパンが多いのを思い出した。やはり水分が多いのかも知れない。

 

中村

 

不思議に思えたのは、実は計量の誤りが原因でした。米国式の計量コップでの計量結果と日本式のとが混同していたことで混乱しました。あらためて、比重を計りなおし、計算をしたところ、私のやり方では、水は重量比で粉の55%になっていて、日本式にくらべるとやはりかなり少なくなっています。水が少ないと粘性が非常に高くなり、そのためにこねる回数がずっとすくなくても、グルテンが出来やすい理屈になります。これで、解決しました。